ファクタリングの申込手順と審査に通るコツ
ファクタリング申込とは?仕組みと基本
ファクタリング申込とは、保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化する手続きです。融資とは異なり負債が増えず、買戻し義務のない「債権の売買」にあたります。
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社のみで完結し、売掛先には通知しないため秘密性が高い一方、手数料は高めです。3社間ファクタリングは、売掛先の同意・通知を前提とするため手数料は低めですが、売掛先に利用が知られる点が特徴です。中小企業や個人事業主、資金繰りが一時的に悪化した事業者に向く資金調達手段といえます。
日本の実務では、このスキームは民法上の債権譲渡(民法466条・467条)と売買契約(555条)を組み合わせたものとして扱われ、貸金業法上の「融資」には該当しません。そのため、貸借対照表上も負債ではなく、資産の入れ替えとして処理されます。
建設業のように支払サイトが60〜120日と長い業種や、銀行融資の審査に時間がかかりやすい創業期・赤字期の企業が、運転資金のつなぎ(ブリッジ)として活用するケースが多く見られます。近年は、AI与信やオンライン完結型のフィンテック系ファクタリングも登場し、申し込みから入金までを数時間で完了できるサービスも増えています。
ファクタリングを申し込む前に確認したいポイント
ファクタリングを使うべきケース・使うべきでないケース
ファクタリングを利用すべきなのは、売掛金の入金待ちで一時的に運転資金が必要な場合や、担保や保証人を用意できない場合です。一方で、長期的・構造的な赤字をファクタリングで補い続け、事業の延命を図るようなケースには適しません。
銀行融資やビジネスローンと比較した場合、ファクタリングは資金調達までのスピードが早く(即日〜数日)、コストは高め、貸借対照表上は負債とならないため、信用情報への即時の影響は小さいという特徴があります。
なお、悪質業者によるトラブルも報告されています。過度な前払割合の提示、手数料の不透明さ、実質的に貸金業であるかのような営業手法には注意が必要です。
事前にチェックしておきたい具体的な項目
手数料水準の目安
3社間ファクタリングではおおむね5〜10%、2社間ファクタリングでは10〜20%前後が相場とされています。30%前後を常態的に提示する業者は、実質的に高利貸しと大差ないケースもあるため、慎重な判断が必要です。
利用頻度の想定
一時的な資金ショートの穴埋めには有効ですが、毎月恒常的に利用すると手数料負担が利益を圧迫し、かえって資金繰りが悪化するリスクがあります。銀行融資、条件変更(リスケ)、コスト削減など、他の施策と組み合わせる前提で検討することが重要です。
売掛先への影響
3社間ファクタリングでは売掛先へ通知が行くため、「資金繰りに苦しんでいるのではないか」と受け止められ、支払サイトの短縮や前受け金の要請など、取引条件に影響が出る場合があります。取引関係を重視する場合は、2社間ファクタリングを選ぶか、銀行系・公的機関系など信用力の高い事業者を選択する方法もあります。
法令遵守・登録状況
ファクタリング自体は貸金業登録が不要なスキームですが、実態として「返済義務付き」の疑似ローンになっている場合、無登録貸金業に該当しうるとされ、行政処分の例もあります。買戻し義務を強く求めてこないか、手数料や違約金の根拠が明示されているかを必ず確認してください。
ファクタリング申込の全体フロー
全体の流れと所要時間の目安
ファクタリング申込の大まかな流れは、次のとおりです。
- 1. 相談・申込
- 2. 書類提出
- 3. 審査
- 4. 契約
- 5. 入金
2社間ファクタリングでは売掛先の同意は不要で、譲渡後は利用者が売掛金を回収し、ファクタリング会社に送金する形態が一般的です。3社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡通知(場合によっては内容証明郵便)が送付され、売掛先がファクタリング会社に直接支払います。通知の有無によって、手続きや所要時間、リスク分担が変わります。
| ステップ | 主な手続き内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 相談・申込 | 電話・Webフォームで問い合わせ、概算見積もり | 数分〜15分程度 |
| 書類提出 | 請求書や通帳コピーなどの必要書類を送付 | メール・アップロードなら即日、郵送なら1〜2日 |
| 審査 | 売掛先の信用力や取引実態の確認 | オンライン型で数時間〜1日、従来型で1〜2営業日 |
| 契約 | 契約内容の最終確認と締結(2社間か3社間かなど) | 電子契約なら即日、紙面契約で1〜3日 |
| 入金 | ファクタリング会社から指定口座へ振込 | 契約締結後、当日〜翌営業日 |
実務上、おおよその所要時間は次のとおりです。
- 相談・申込:電話・Webフォームで数分〜15分程度
- 書類提出:メール・アップロードであれば即日、郵送の場合は1〜2日
- 審査:オンライン型(AI与信など)の場合は数時間〜1日、従来型でも1〜2営業日程度
- 契約:電子契約なら即日、紙面契約なら書類の往復で1〜3日
- 入金:契約締結後、当日〜翌営業日の振込が多い傾向です。
2社間・3社間で異なる手続き
3社間ファクタリングでは、民法467条に基づく「確定日付のある債権譲渡通知」が重視され、内容証明郵便による通知が行われるケースも少なくありません。これにより、二重譲渡や支払先の錯誤を防ぎ、ファクタリング会社の権利を保全します。
2社間ファクタリングでは、こうした通知を省略する代わりに、ファクタリング会社が独自の二重譲渡防止スキーム(譲渡登記の活用や専用管理口座の設定など)を採用していることが多くあります。
Step1:ファクタリング会社の選び方と初回相談
会社選びで重視したいポイント
ファクタリング会社は、手数料率だけで選ぶべきではありません。審査スピード、支払条件(2社間か3社間か)、過去の実績、契約書の条項(とくに買戻し義務の有無)、サポート体制などを総合的に比較することが重要です。
初回相談時には、少なくとも次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 想定される手数料率の範囲
- 入金までの最短日数
- 必要書類の一覧
- 解約・契約解除時の条件
- 二重譲渡対策の有無や方法
安全性を高めるためのチェック観点
運営主体・実績
銀行・公的機関系、専門のファクタリング会社、フィンテック系など、運営主体によって審査方針やスピードが異なります。建設業特化、フリーランス特化など、自社と同じ業種に強い事業者は、業界慣行を踏まえた柔軟な対応が期待できます。
公開情報・口コミ
公式サイト上で手数料レンジ、平均入金日数、具体的な事例などを明示しているか、第三者サイトで悪質なトラブル報告が多くないかを確認しましょう。「手数料完全非公開」「とにかく即金」といったキャッチコピーのみを前面に出し、詳細条件を開示しない業者は避けるのが無難です。
見積もり時の説明姿勢
初回見積もりの段階で、手数料の内訳(買取額・手数料・実際の振込額)、契約形態(2社間か3社間か)、期限の利益喪失条項、遅延時のペナルティなどについて、丁寧で具体的な説明があるかを確認してください。質問に対して曖昧な回答しか得られない場合は、その時点で候補から外すことも検討すべきです。
Step2:ファクタリング申込時に必要な書類
基本的に必要となる書類
最低限必要となる書類は、次の3点です。
- 請求書(売掛先・金額・支払期日が明記されたもの)
- 通帳コピーまたは入出金明細(直近2〜6ヶ月分)
- 本人確認書類(代表者の身分証)
これに加え、審査を有利に進めるための追加書類として、決算書・確定申告書、試算表、取引基本契約書、発注書・納品書、登記簿謄本、印鑑証明書などが挙げられます。これらは、売掛債権の真正性や取引実態を示す重要な資料です。
書類準備をスムーズに進めるための考え方
請求書関連
インボイス制度に対応した適格請求書であれば、取引内容や税区分が明確なため、審査が円滑になりやすい傾向があります。注文書、見積書、納品書、検収書などが揃っていれば、請求に至る一連の取引プロセスを示すことができ、架空請求への疑念を払拭しやすくなります。
通帳・入出金明細
ネットバンキングのPDF明細を認める事業者も増えています。売掛先からの過去の入金実績が継続して確認できれば、「取引先の支払姿勢が良好」と評価されやすくなります。
事業実態関連
直近の決算書や確定申告書、月次試算表は、事業規模や売上の推移を把握するための重要な資料です。赤字であっても、売上が増加傾向にある、固定費削減を進めているなど、改善の方向性が読み取れる資料があれば、プラスに評価される可能性があります。
法人・個人事業主別の違い
法人の場合は商業登記簿謄本や印鑑証明書など、登記情報や代表者の権限を確認できる書類が求められる傾向があります。一方、個人事業主の場合は開業届の控え、青色申告承認申請書の控え、確定申告書一式など、事業の実在性と継続性を示す書類が重視されます。
申込前に整理しておきたい最終チェック
ファクタリングは、スピードと引き換えに手数料負担が重くなりがちな手段です。だからこそ、申込前の見極めと準備が結果を左右します。
まず、自社の資金ショートが一時的なものか、構造的なものかを整理し、ファクタリングを使う場面かどうかを冷静に判断してください。そのうえで、銀行融資やビジネスローンと比較し、「いつまでに」「いくら」「どの程度のコストなら許容できるか」を具体的に言語化しておくと、業者選びの軸がぶれにくくなります。
申込のフロー自体は、相談・書類提出・審査・契約・入金というシンプルな流れです。ただし、2社間か3社間かによって、売掛先への通知や所要時間、手数料水準、リスク分担が変わります。売掛先との関係性や、情報をどこまで開示できるかを踏まえつつ、自社に合う方式を選ぶことが欠かせません。

