請求書のみで利用できるファクタリングの仕組みとは?
「ファクタリング 請求書のみ」の本当の意味
「請求書のみ」とは、決算書や税務書類を提出せずに、請求書(売掛債権)を中心に資金化できる、という意味合いで用いられる宣伝文句です。実務上は「請求書を起点に審査する」という意味が強く、完全に請求書1枚だけで契約・審査が完了するケースはほとんどありません。
実際には、請求書の内容に加えて、通帳や取引の証拠などから「その売掛金が確かに存在し、将来入金が見込めるか」を確認するのが一般的です。審査の重心は、申込者本人よりも「売掛先(取引先)の信用力」と「売掛債権の実在性・回収可能性」に置かれる傾向があります。
「請求書だけでOK」は本当に可能なのか?
原則として、請求書だけでファクタリングを完結させることはできません。架空請求や二重譲渡の防止、売掛先の信用確認のために、通帳や本人確認書類など、最低限の追加資料が求められます。
比較サイトや専門家の解説でも、「請求書だけで完結」とうたう事業者には注意が必要とされています。正規のファクタリング会社であれば、「請求書+通帳コピー+本人確認書類」程度は必須と明言していることが一般的です。申込画面では「請求書だけ」と表示されていても、実際の契約段階で追加書類を要求されることが多いため、この点には十分留意する必要があります。
請求書ベースのファクタリングの基本
ファクタリングとは?融資との違い
ファクタリングは、売掛債権を譲渡して期日前に現金化する取引であり、貸付ではなく「債権譲渡」にあたります。返済義務は債権の回収成否に依存し、ノンリコース型とリコース型で取り扱いが異なります。
融資のように「借りたお金を元本+利息で返済する」のではなく、「将来入金予定の売掛金を割り引いて売却する」取引であるため、会計上や金融規制上の性質も融資とは異なります。赤字決算や税金滞納がある場合でも、売掛先の信用力が高ければ利用できる余地がある点が、銀行融資との大きな違いです。
2者間・3者間ファクタリングの違い
2者間ファクタリングは、売掛先にファクタリングの事実を通知せず、利用者とファクタリング会社の2者間で完結する形態です。手続きが比較的簡便な一方で、手数料は高めに設定されることが多くなります。
2者間の場合、売掛先は従来どおり利用者に支払いを行い、その後に利用者がファクタリング会社へ支払う形となるケースが一般的です。このため、売掛先リスクに加えて「利用者がファクタリング会社にきちんと支払うか」というリスクも上乗せされ、手数料が高くなりがちです。
3者間ファクタリングは、売掛先に売掛債権譲渡の事実を承諾・通知したうえで、期日到来後に売掛先がファクタリング会社へ直接支払う形態です。回収リスクが低く、手数料を抑えやすい一方、「資金繰りが厳しい」と売掛先に知られたくない中小企業にとっては、利用の心理的ハードルが存在します。
「請求書」がなぜ資金調達に使えるのか
請求書は、将来の入金見込みを示す売掛債権であり、相手先の信用力が担保されれば現金化が可能な資産だからです。
とくに、納品・検収が完了し、金額と支払期日が確定した売掛金は「確定債権」として扱われ、法的にも譲渡しやすい性質を持っています。審査では、申込者の決算内容だけでなく、次のような点が重視されます。
- 取引先が大手企業・上場企業・公的機関であるか
- 過去に同じ相手からの入金実績があるか
これらの要素が、請求書ベースの資金調達を支える土台となっています。
「請求書のみOK」と宣伝されるサービスの実態
広告でよく見るフレーズと実務のギャップ
広告では、手続きの簡便さやスピード感が強調されるため、「最短即日」「請求書だけでカンタン審査」といったキャッチコピーが多く用いられます。しかし、これはあくまで「申込のスタート時点で必要となる情報が請求書である」という意味合いであることがほとんどです。
実際には、以下のような書類を求められる例も少なくありません。
- 通帳コピー
- 取引のやり取りが分かるメールやチャット履歴
- 本人確認書類
- 場合によっては直近の決算書や確定申告書
特にオンライン完結型サービスでは、画面上は手軽に見えても、アップロードを求められるファイル数が多いケースもあります。利用前には、「どの段階で・何を・どこまで提出する必要があるのか」を事前に確認しておくことが重要です。
多くの業者が最低限求める書類セット
多くのファクタリング会社が最低限求める典型的な書類は、次の3点です。
- 請求書
- 通帳の入出金履歴
- 本人確認書類
加えて、発注書やメールなどの取引証拠を求める場合もあります。
これらが揃えば、少なくとも次の点を確認できます。
- 実在する取引に基づく請求かどうか(請求書+取引証拠)
- 過去にも同じ売掛先から入金があったかどうか(通帳)
- 申込者が実在し、なりすましでないかどうか(本人確認書類)
一部のサービスでは、チャットツール(Slack、Chatworkなど)のメッセージ履歴や、クラウド請求書サービスの画面キャプチャといったデジタルな取引証跡も「取引証拠」として認めています。これにより、紙の書類を揃えにくいフリーランスでも利用しやすい形になっています。
実際の申し込みフローと提出ステップ
一般的な申し込みから資金化までの流れは、以下のようなステップです。
- 申込
- 請求書提出
- 通帳や取引証拠の確認
- 審査
- 契約・譲渡手続き
- 買取実行
オンライン型サービスの具体的な流れは、次のような形が多く見られます。
- Webフォームで基本情報を入力(事業内容、売掛先、希望金額など)
- 請求書データをアップロード
- 通帳の入出金履歴や取引証拠をアップロード(または口座連携ツールで自動取得)
- AIまたは担当者による審査(早い場合は数時間〜当日中)
- 契約書の締結(電子契約が主流だが、対面・郵送対応の会社もある)
- 債権譲渡の通知・登記(必要に応じて実施)
- 買取代金の入金
少額かつ短期の案件であれば、申込から入金まで1〜2日で完了するサービスも増えています。
なぜ「請求書のみ」ではダメなのか
架空請求・二重譲渡などのリスク
請求書だけでは、売掛債権が実在するか、すでに別の金融機関やファクタリング会社に譲渡されていないかを判断できません。その結果、ファクタリング会社が大きな損失リスクを負うことになります。
代表的なリスクとして、以下のようなものが挙げられます。
- 実際には存在しない取引に基づく「架空請求」
- 既に他社へ譲渡した売掛債権を、再度売却しようとする「二重譲渡」
これらの不正を防ぐために、ファクタリング会社は次のような複数の証拠を突き合わせ、整合性を確認する必要があります。
- 過去の入金履歴
- 契約書・発注書・納品書
- 取引先とのコミュニケーション履歴
このようなチェックを行うには、「請求書1枚だけ」では情報が不足しており、不正の見抜きが困難です。
売掛先の信用力を確認するために必要な情報
売掛先の支払能力や支払履歴は、売掛金の回収可能性に直結するため、審査上きわめて重要です。そこで、ファクタリング会社は次のような観点から情報を収集します。
- 同じ売掛先からの過去の入金実績(通帳で確認)
- 支払遅延が頻発していないか
- 売掛先の業歴や企業規模、取引先の分散状況(特定の1社への依存度など)
- 業界特性(倒産や不払いが多い業界かどうか)
上場企業や自治体、大企業などが売掛先であれば、信用調査が比較的容易で、審査が通りやすくなる傾向があります。一方で、中小企業同士や零細企業同士の取引では、公表情報が少ない場合も多く、複数の資料から慎重に情報を確認する必要があります。
通帳・取引証拠・身分証が求められる理由
通帳の入出金履歴や取引証拠、本人確認書類などが求められるのは、不正や過失を防ぎ、回収リスクを軽減するためです。
通帳の入出金履歴からは、次のような点が確認できます。
- 売掛先からの入金パターン(毎月一定のタイミングで支払いがあるかなど)
- 取引額の妥当性(申告されている売上規模と請求額のバランス)
また、発注書・納品書・メール等の取引証拠は、請求書に記載された金額や条件が、実際の取引内容と整合しているかどうかを裏付ける資料になります。本人確認書類は、なりすましや反社会的勢力との取引を防ぐための基本的なチェック項目です。
まとめ:請求書ベースのファクタリングを賢く見極めるポイント
請求書ベースのファクタリングは、決算書や税務書類を揃えにくい事業者にとって、選択肢になりやすい資金調達手段です。ただし、「請求書のみOK」という宣伝を文字どおり受け取ると、実務とのギャップに戸惑うことになりかねません。
実際には、請求書を起点としつつも、通帳の入出金履歴や取引証拠、本人確認書類などを通じて、「請求の内容が本物か」「売掛先にきちんと支払能力があるか」を確認する流れが一般的です。これは、架空請求や二重譲渡などの不正、回収不能リスクを避けるために欠かせないプロセスといえます。
したがって、請求書のみを強調する広告に出会ったときは、次のポイントを具体的に確認しておくと安心です。
- 実際に提出が必要な書類の一覧
- 申込から入金までの具体的なステップ
- 2者間か3者間か、といったスキームの違いと手数料水準
「請求書だけだから簡単そう」ではなく、「どの範囲まで情報開示が必要か」「その分どの程度のスピードと安心が得られるか」を比較し、自社に合ったサービスを選ぶことが、賢いファクタリング活用の第一歩といえるでしょう。

