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買掛金取引におけるファクタリングの仕訳方法

目次

買掛金取引とファクタリングの基本を整理

「買掛金」とは何か:「売掛金」との違い

買掛金は、商品やサービスの仕入に伴って発生する未払代金を指す流動負債で、会計上は「(借方)仕入/(貸方)買掛金」として計上します。支払時には「(借方)買掛金/(貸方)普通預金」として消し込みます。通常、取引先ごとの補助科目(例:買掛金/○○商店)を用いて管理します。

売掛金は、商品やサービスの販売により発生する未収代金を指す流動資産で、「(借方)売掛金/(貸方)売上」として計上し、回収時に「(借方)普通預金/(貸方)売掛金」として消し込みます。こちらも取引先別の補助簿で管理します。

仕入で発生する「買掛金」と、販売で発生する「売掛金」が対となることで、「仕入→販売→回収→支払」という事業全体の資金の流れが形成されます。

ファクタリングとはどのような資金調達方法か

ファクタリングは、保有している売掛金をファクタリング会社に譲渡して現金化する手法です。銀行借入のような融資ではなく、民法上の「債権譲渡」に該当します。新たな負債を計上するのではなく、既存の資産(売掛金)を売却して資金化する点が特徴です。

買取型ファクタリングでは、売掛金額から手数料(目安として2〜10%程度)を差し引いた金額が即日〜数日で入金され、その代わり売掛金の回収リスクはファクタリング会社に移転します(ノンリコース型が典型です)。

保証型ファクタリングでは、売掛金そのものは自社に残しつつ、未回収リスクのみをファクタリング会社に保証してもらい、その対価として保証料を支払います。

「ファクタリング 仕訳 買掛金」が注目される理由

実務では、売掛金をファクタリングで現金化し、その資金を買掛金の支払いに充てるケースが多く見られます。この際、仕訳の連動や手数料処理を誤ると、損益や残高が正しく表示されなくなるため、関心が高いテーマとなっています。

典型的な誤りとしては、次のようなものがあります。

  • 売掛金の消し込み漏れにより、売掛金残高が実態より多く表示される
  • ファクタリング手数料の費用計上漏れにより、利益が過大に表示される
  • 買掛金支払との相殺や値引き処理を誤り、売上・仕入が過小または過大となる

これらは月次残高や決算書の信頼性に直結します。特に2社間ファクタリングでは、入金の見た目が「借入金の入金」に似ているため、誤って借入金として処理してしまうケースが多く、注意が必要です。


買掛金・売掛金の基本仕訳

買掛金の発生から支払いまでの仕訳

仕入発生時

(例)1,000,000円の仕入を掛けで行った場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
仕入 1,000,000 買掛金 1,000,000

支払時

借方科目 金額 貸方科目 金額
買掛金 1,000,000 普通預金 1,000,000

返品や値引きがある場合は、

(借)買掛金/(貸)仕入戻し・仕入値引き

といった仕訳で調整します。

買掛金は「どの取引先に、いくら支払う義務があるか」を把握する必要があるため、買掛金元帳や支払予定表などで取引先別に管理することが前提となります。

売掛金の発生から回収までの仕訳

売上発生時

(例)1,000,000円を掛けで販売した場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 1,000,000 売上高 1,000,000

回収時

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 1,000,000 売掛金 1,000,000

売上返品や値引きがある場合は、

(借)売上戻り・売上値引き/(貸)売掛金

で調整します。

売掛金は将来の入金予定であり、ファクタリングはこの「まだ入金されていない売掛金」を前倒しで現金化する仕組みです。

買掛金と売掛金が同時に動く典型的なケース

仕入と販売を同時に行う事業では、売掛金の回収で得た資金を買掛金の支払いに充てる流れが一般的です。

  • 仕入発生:買掛金が増加
  • 販売発生:売掛金が増加
  • 売掛金回収:普通預金が増加
  • 買掛金支払:普通預金が減少

ここにファクタリングを介在させると、

「売掛金の回収を待たずに売掛金を譲渡→現金化→買掛金支払」

というプロセスになります。この場合、売掛金の消去とファクタリング手数料の計上といった仕訳が追加されます。

その結果、仕訳本数が増え、取引先・残高の紐づけも多くなるため、実務上の管理難度が高まります。


ファクタリング利用時の仕訳の全体像

ファクタリングで仕訳対象となるのは「売掛金側」

ファクタリングの仕訳では、売掛金の譲渡・消却と入金処理、手数料の費用計上が中心となり、買掛金自体は直接は動きません。

典型的な買取型ファクタリングでは、次のような流れになります。

  • 売掛金を譲渡しても、譲渡時点では仕訳を起こさない(備忘記録にとどめる)
  • ファクタリング会社から入金された時点で、売掛金をまとめて消去し、その差額を手数料として費用計上する

このとき、売掛金の相手勘定はファクタリング会社ではなく、あくまで「売掛先(本来の取引先)」のまま管理します。

買掛金への影響と資金繰りとの関係

ファクタリングにより得た現金を買掛金支払いに充てることで、資金繰りを改善できます。ただし、手数料負担が増える点には留意が必要です。

メリット デメリット
  • 売掛金の回収サイトが長い場合でも、買掛金の支払期日までに必要な現金を確保しやすくなる
  • 支払遅延や延滞を防ぐことで、仕入先からの信用維持や、仕入条件の改善につながる可能性がある
  • ファクタリング手数料は実質的に「資金調達コスト」であり、年利換算で10〜30%程度となることもある
  • 利用頻度が高い場合、売上総利益を圧迫し、赤字の一因となりうる

そのため、「買掛金をいつまでにいくら支払う必要があるか」「売掛金のファクタリングにどの程度のコストを許容できるか」を、資金繰り表と合わせて検討することが重要です。

会計上の位置づけ:借入ではなく「債権譲渡」

ファクタリングは原則として借入ではなく債権譲渡の取引であり、新たな借入金の計上は行いません。会計上は以下のように処理します。

  • 貸借対照表(B/S)
    • 売掛金(資産)の減少
    • 普通預金(資産)の増加
  • 損益計算書(P/L)
    • ファクタリング手数料を「支払手数料」や「売掛債権譲渡損」として費用計上

この取引を誤って借入金として処理してしまうと、負債比率や自己資本比率などの財務指標が実態と異なってしまい、金融機関の評価を誤らせるおそれがあります。


【基本パターン】買掛金支払資金をファクタリングで用意する場合

ステップ1:売掛金の発生(通常の売上仕訳)

売上計上時の仕訳は通常どおりです。

(借)売掛金/(貸)売上

同時に、取引先別の売掛金補助元帳にも記録します。

ステップ2:ファクタリング会社への売掛金譲渡

多くの場合、売掛金をファクタリング会社に譲渡する時点では仕訳を起こさず、入金時に売掛金をまとめて消却します。

実務上は、次のような運用が行われることがあります。

  • 譲渡契約締結時:仕訳は起こさず、備忘記録のみとする
  • 決算をまたぐ場合:売掛金の一部を「未収金」などへ振り替えて表示を変更する

ただし、基本的な考え方としては「入金時に売掛金をまとめて消す」と覚えておけば差し支えありません。

ステップ3:入金時の仕訳(手数料の処理)

例:売掛金100万円をファクタリングし、手数料10万円、入金額90万円の場合の仕訳は次のとおりです。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 900,000 売掛金 1,000,000
支払手数料
(または 売掛債権譲渡損)
100,000

会計ソフト上は、「普通預金900,000/売掛金1,000,000」と「支払手数料100,000/売掛金▲」を1つの伝票にまとめて入力するなど、運用上の工夫を行うこともあります。

手数料の勘定科目は、次のようなものから自社の会計方針に合わせて選択し、継続して同じ処理を行うことが望ましいです。

  • 支払手数料
  • 支払手数料(ファクタリング)
  • 売掛債権譲渡損

ステップ4:入金資金で買掛金を支払うときの仕訳

ファクタリングによる入金を用いて買掛金を支払う際の仕訳は、通常の買掛金支払と変わりません。

(借)買掛金/(貸)普通預金

この仕訳により、買掛金が消滅します。

まとめ:ファクタリングと買掛金仕訳で押さえたい3つのポイント

本記事では、買掛金・売掛金の基本から、ファクタリング利用時の仕訳のつながりを整理しました。押さえておきたいポイントは次の3つです。

  • 1つ目:
    ファクタリングの仕訳対象はあくまで「売掛金側」であり、買掛金の仕訳は通常どおり行うという点です。売掛金の発生は「売掛金/売上」、買掛金の支払いは「買掛金/普通預金」という基本は変わりません。
  • 2つ目:
    ファクタリングの入金時に「売掛金の消去」と「手数料の費用計上」を同時に処理することです。入金額だけを普通預金の増加として記録すると、売掛金残高や利益が実態とかけ離れてしまいます。売掛金の相手先はあくまで本来の取引先であり、ファクタリング会社を売掛先として扱わない点も重要な確認事項です。
  • 3つ目:
    ファクタリングは資金繰りの改善に有効な一方で、手数料というコストが継続的に発生する取引であることです。買掛金支払のために多用しすぎると、売上総利益を圧迫し、利益計画にも影響します。資金繰り表や収益計画と合わせて、「どのタイミングで・どの程度利用するか」を検討することが求められます。
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