介護報酬ファクタリングとは?基本の考え方
「ファクタリング 介護報酬」とは何か
介護報酬ファクタリングとは、介護事業者が国民健康保険団体連合会(国保連)などの公的機関に対して有する介護報酬債権を、ファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いたうえで早期に現金化する手法です。通常は請求から入金まで約2ヶ月かかるところを、即日から数日程度で資金化できます。
医療・介護業界向けに特化したサービスが多く、診療報酬と同様に「買取型ファクタリング」が主流です。債権の売掛先が国保連などの公的機関であるため、一般の売掛債権に比べて信用度が高く、審査が比較的スムーズに進みやすい点が特徴です。
介護報酬の入金サイクルと資金繰りの課題
介護報酬は、レセプト請求から実際の振込まで約2ヶ月のタイムラグがあります。この間にも人件費や家賃、リース料などの固定費、その他の運転資金の支払いは発生するため、資金繰りが逼迫しやすい構造です。
特に小規模なデイサービスや訪問介護事業所では、売上としての介護報酬の入金が遅れることで、「帳簿上は黒字なのに現金が足りない」という状況に陥りやすくなります。さらに、急な利用者減少やコロナ禍などの外部環境の変化が重なると、一時的な資金ショートが発生しやすくなり、そのギャップを埋める手段として介護報酬ファクタリングが利用されています。
診療報酬ファクタリングとの違い
介護報酬ファクタリングと診療報酬ファクタリングは、基本的な仕組みはほぼ同じです。いずれも公的機関に対する債権を早期に現金化するものであり、公的債権であることから審査に通りやすいという共通点があります。
診療報酬ファクタリングは、医療機関や調剤薬局などが対象で、社会保険診療報酬支払基金や国保連が支払主体となります。一方、介護報酬ファクタリングは、介護保険制度に基づくデイサービスや訪問介護等のサービス提供分が対象であり、国保連への請求分が中心となります。
いずれも請求から入金までの期間が長いことに加え、国保連などへの電子請求データ(レセプト)によって債権の存在と金額が確認できるため、ファクタリング会社から見ると「安定した公的債権」として取り扱われる点が共通しています。
介護報酬ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングの流れ
2社間ファクタリングは、介護事業者とファクタリング会社の2者間で完結する方式です。一般的な流れは次のとおりです。
- 介護事業者が国保連などに対する介護報酬債権をファクタリング会社に売却する
- ファクタリング会社が手数料を差し引いて介護事業者に入金する
- 後日、国保連から介護事業者の口座に介護報酬が入金される
- 介護事業者がその入金から、ファクタリング会社に売却した債権分を支払う
この方式では、国保連に対して債権譲渡の通知を行わないため、ファクタリングの利用を外部に知られにくいというメリットがあります。一方で、万一国保連からの入金が減額されたり遅延したりしても、原則として介護事業者はファクタリング会社に対して全額を支払う義務を負います。
2社間ファクタリングは、小口案件や個人事業主でも利用しやすい反面、ファクタリング会社側のリスクが大きいため、手数料が高めに設定される傾向があります。
3社間ファクタリングの流れ
3社間ファクタリングは、介護事業者・ファクタリング会社・国保連の三者が関与する方式です。一般的な流れは次のとおりです。
- 介護事業者とファクタリング会社が、介護報酬債権の譲渡契約を締結する
- 介護事業者とファクタリング会社が連名等で国保連に対し、「今後、この事業所分の介護報酬はファクタリング会社に支払う」旨を通知し、承認を得る
- 国保連は、介護報酬を介護事業者ではなく、直接ファクタリング会社に支払う
- ファクタリング会社は、あらかじめ定めた手数料を差し引いたうえで、介護事業者に資金を提供する
この方式では、入金ルートが国保連からファクタリング会社へと切り替わるため、介護事業者は債権回収業務を負わずに済みます。その結果、ファクタリング会社にとっては回収リスクが低くなり、2社間ファクタリングよりも手数料が抑えられやすい仕組みとなっています。一方で、国保連への通知と承認が必須となるため、手続きに一定の時間を要します。
2社間と3社間の違い(手数料・スピード・リスク)
2社間と3社間の主な違いは、手数料水準、資金化までのスピード、リスクの負担者です。
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 手数料の目安 | 高め(例:約10%前後) | 低め(例:約6〜7%前後) |
| 資金化までのスピード | 即日対応を含め、迅速な資金調達が可能 | 国保連への通知・承認に時間がかかる |
| 回収リスクの負担者 | 減額・遅延があっても介護事業者が支払義務 | 国保連から直接入金されるため、主にファクタリング会社 |
| 外部への周知 | 国保連への通知不要で知られにくい | 国保連への通知・承認が必要 |
整理すると、2社間ファクタリングは「資金化が早く、利用していることを知られにくいが、高コストでリスクは事業者側」が特徴です。一方、3社間ファクタリングは「手続きに時間がかかり、国保連への通知が必要だが、コストは低く、回収リスクはファクタリング会社側」が特徴となります。
一般的には、少額や単発での利用には2社間、大口または継続利用には3社間が選ばれることが多いとされています。
どの部分の介護報酬が対象になるのか
介護報酬ファクタリングの対象となるのは、主に国保連などに対して請求された、確定済みの介護報酬債権(レセプト請求分)です。
具体的には、介護保険給付分(原則として請求額の約9割)を中心とした「公費負担分」が対象となりやすく、自費サービス分や未請求分、将来の見込み売上などは原則として対象外です。
一部の事業者では、注文書ファクタリングのように「将来発生予定の債権」を取り扱うケースもありますが、介護報酬ファクタリングでは、すでに請求が行われ、金額が確定している債権を対象とするのが一般的です。
介護報酬ファクタリングを利用するメリット
資金繰り改善:2ヶ月待ちが即日現金化に
介護報酬ファクタリングを利用すると、本来であれば入金まで約2ヶ月待つ必要がある介護報酬を、即日から数日程度で現金化できます。これにより、急な人件費や運転資金の支払いに充てることができ、キャッシュショートを回避しやすくなります。
例えば、コロナ禍で一時的に利用者数が減少し、売上が落ち込んだ事業所が、給与支払いや賃料の支払いに不安を抱えた際に、介護報酬ファクタリングを活用して支払期限までに必要額を確保し、事業継続につなげた事例が報告されています。初回利用時には、未入金の2ヶ月分をまとめて資金化できる場合もあり、一時的にキャッシュフローが大きく改善するケースもあります。
銀行融資と比べたときのメリット
介護報酬ファクタリングは、一般的に無担保・保証人不要で利用でき、銀行融資に比べて審査が速い傾向にあります。また、直近の決算が赤字であっても、利用できる場合があります。
銀行融資では、過去の決算内容や自己資本比率など、事業者自身の財務内容が重視されます。一方、ファクタリングでは、主に売掛先である国保連などの公的機関の信用力が重視されます。そのため、設立間もない事業所や、直近決算で赤字計上している事業所であっても、一定の介護報酬請求実績があれば利用可能となるケースが多い点が大きなメリットです。
審査の通りやすさと無担保・保証人不要の利点
介護報酬の売掛先は国保連などの公的機関であり、信用評価が高いことから、ファクタリングの審査通過率は比較的高い傾向にあります。
実際に、医療・介護報酬専門のファクタリング会社の中には、「審査通過率98%」といった数値を公表しているところもあります。また、多くのスキームで不動産などの担保や代表者個人の連帯保証を求めないため、すでに不動産担保や信用保証協会の枠を使い切っている事業者でも、追加の資金調達手段として活用しやすくなります。
まとめ:介護報酬ファクタリングを上手に活用するポイント
介護報酬ファクタリングは、介護報酬の入金まで約2ヶ月かかるという構造的なタイムラグを前提に、その間の資金ギャップを埋めるための手段です。国保連など公的機関に対する介護報酬債権を売却することで、無担保・保証人不要かつ比較的審査も通りやすい形で、短期間のうちに現金を調達できます。
一方で、2社間と3社間では、手数料水準や入金スピード、リスクの負担先が大きく異なります。
- 2社間:入金は早く、外部に知られにくいが、手数料は高めで事業者側の負担リスクが大きい
- 3社間:手続きに時間はかかるものの、手数料は抑えやすく、回収リスクはファクタリング会社側が中心
また、対象となるのは、国保連等に請求済みで金額が確定した介護報酬債権が中心であり、自費サービスや未請求分は原則対象外です。自社の資金繰り状況や利用目的に応じて、2社間・3社間のどちらが適切か、手数料や契約条件を比較検討しながら、無理のない範囲で活用していくことが重要です。

