「請求書だけでOK」は本当?フリーランスのファクタリングの現実
「請求書のみで現金化できます」という宣伝のカラクリ
「請求書のみで現金化」というフレーズに惹かれつつも、本当にそんな簡単な話なのか、不安を抱えるフリーランスは少なくありません。実際の審査では、通帳や取引履歴の提出を求められる場面がほとんどです。この記事では、「請求書だけでOK」という宣伝の裏側と、フリーランスが現実的に押さえておくべきファクタリングのポイントを整理してお伝えします。
広告でよく見る「請求書だけでOK」という表現は、利用者に分かりやすく伝えるためのキャッチコピーにすぎません。実際には、請求書単体では架空取引や詐欺のリスクが高いため、多くのファクタリング会社が入出金明細や本人確認書類、取引履歴などの提出を求めます。
「請求書のみで即審査・即入金」と宣伝している業者であっても、実際には審査条件が厳しく、後から追加書類の提出を求められることが少なくありません。
とくにフリーランス向けの少額ファクタリング(1万円〜など)は、「書類少なめ・即日対応」といった打ち出し方をする一方で、裏側ではAI審査や入出金明細のチェックを通じて、売掛先の信用力や取引の実在性を細かく確認しています。
「請求書だけを送れば誰でも必ず通る」という意味ではなく、「決算書や確定申告書までは求めない」という程度に理解しておくと、サービス選びのミスマッチを減らせます。
フリーランスでも原則NGなケースと、例外的に通るケース
フリーランスのファクタリング利用で、原則として審査が通りにくいケースは次のとおりです。
- 売掛先が個人で、事業者登録がない場合
- 取引実績がない単発案件のみの場合
- 請求書に記載漏れや不備がある場合
一方で、例外的に少ない書類で通るケースもあります。
- 売掛先が法人である
- 売掛先との継続的な取引実績がある
- メールやチャットでのやり取りなど、取引の証拠が残っている
こうした条件が揃い、さらに少額特化型のサービスを利用する場合には、最小限の書類で審査が通ることがあります。
また、売掛先がインボイス登録済みの法人・個人事業主であり、過去2〜3ヶ月分の通帳から入金実績が確認できると、審査はスムーズになりやすくなります。逆に、通帳から売掛先の支払い遅延やトラブルが読み取れる場合は、少額であっても否決されるケースがあります。
「請求書のみ」が危険な業者のサインになる理由
「請求書のみで即振込」「審査ほぼ不要」といった宣伝を行う業者のなかには、審査をほとんど行わない代わりに手数料を大きく上乗せしたり、契約後に償還請求(利用者側の返金義務)のルールを非常に厳しく設定しているケースがあります。契約前には、必ず契約書や利用規約の条項を確認することが重要です。
とくに注意すべきなのは、貸金業ではなく「債権譲渡」と称しながら、実態としては高金利の短期融資と変わらないサービスです。「誰でもOK」「ブラックでもOK」といった過度な宣伝を行う業者では、出資法の上限金利ギリギリの高コストになっていたり、売掛先が支払わなかった場合に「全額一括返金+高額な違約金」を求める条項が潜んでいることがあります。
このような業者はトラブルの原因になりやすいため、「請求書だけでOK」という言葉だけで判断せず、手数料の上限や償還条件などを必ず確認しましょう。
フリーランスがファクタリングを使うときの基本知識
ファクタリングとは何か(融資との違い)
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その対価として請求金額の一部を先に受け取る仕組みです。あくまで「債権の売買」であり、「借入」ではありません。
銀行融資などの貸金と異なり、原則として利用者に返済義務はなく、その代わりに手数料を支払って売掛金を即時に現金化します(償還請求の有無や範囲は契約条件によります)。
この仕組みにより、銀行融資のように「借入金」としてバランスシート上の負債に計上されず、個人の信用情報機関にも通常は登録されません。一方で、手数料は3〜10%前後とやや高めです。入金予定日までの期間(たとえば30〜90日)を短縮するためのコストと考えると、イメージしやすいでしょう。
個人事業主・フリーランス向けファクタリングの仕組み
フリーランス向けファクタリングでは、基本的に次のような流れになります。
- 請求書をファクタリング会社に譲渡する
- 請求金額から手数料を差し引いた金額が、指定口座に入金される
- 期日になったら売掛先がファクタリング会社へ支払う(2者間の場合は利用者がいったん入金を受けてから再送金する形もあります)
審査では、利用者本人の信用情報よりも、売掛先の企業としての信用力や取引の実在性が重視されます。そのため、法人向け融資のような決算書を求められないケースが多く、確定申告書の提出も不要なサービスが増えています。
オンライン完結型のフリーランス向けサービスでは、一般的に以下のような流れです。
- Webフォームから申し込み
- 請求書PDF、通帳の入出金明細、本人確認書類をアップロード
- AIと担当者による審査で、売掛先の規模・支払い実績・取引履歴などを評価
freeeなどのクラウド会計ソフトや、専用の事業口座と連携するタイプのサービスでは、そのデータをもとに自動与信が行われます。その結果、審査時間の短縮や手数料の引き下げにつながることがあります。
2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違い
2者間ファクタリング
- 利用者(フリーランス)とファクタリング会社の2者で完結
- 売掛先にはファクタリングの利用を通知しない(通知しないスキーム)
- 売掛先との関係悪化を避けやすい反面、ファクタリング会社側のリスクが高くなるため、手数料や償還請求の条件が厳しくなりがち
フリーランスや個人事業主向けのサービスの多くは、この2者間ファクタリングを採用しています。その結果として、
- 売掛先が倒産したり支払いを拒否した場合のリスク(償還請求)が契約上、利用者側に重く設定されやすい
- 登記や債権譲渡通知を行わない代わりに、手数料がやや高めになりやすい
といった傾向があります。
3者間ファクタリング
- 利用者・ファクタリング会社・売掛先の3者間で契約
- 売掛先に債権譲渡を通知し、売掛先は期日にファクタリング会社へ直接支払う
- ファクタリング会社のリスクが下がるため、手数料は2者間より低めが一般的
- 売掛先の同意や社内稟議が必要になるため、フリーランスが気軽に使える形ではない
3者間ファクタリングは、中小企業による高額取引で使われることが多く、フリーランスでの利用は少数派です。
フリーランスは「請求書以外に何が必要なのか」
最低限そろえるべき書類リスト
フリーランスがファクタリングを利用する際、一般的に求められる最低限の書類は次のとおりです。
- 請求書
- 入出金明細(通帳のコピー、またはネットバンキング画面の出力:直近2〜3ヶ月分)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 取引を示すメールやチャットのスクリーンショットなど、業務内容や金額がわかるエビデンス
サービスによっては、上記に加えて次のような書類を求められる場合があります。
- 振込先として指定する「事業用口座」の情報
- インボイス登録番号(該当する場合)
- 報酬の支払通知書、業務委託契約書、注文書・発注書 など
フリーランス向けサービスでは、「請求書+2〜3点の書類」が基本的なパターンと考えておくとよいでしょう。
なぜ請求書だけだと審査に通らないのか
請求書だけでは、取引が本当に存在するかどうか、売掛先に支払い能力があるかどうかを判断できません。架空請求の作成やPDFの偽造は技術的に容易であり、請求書のみでの審査は、ファクタリング会社にとって大きなリスクとなります。
とくにオンラインでPDFをアップロードするだけの仕組みでは、そのリスクが高まります。そのため、多くのファクタリング会社は、次のような複数の情報を組み合わせて取引の実在性を確認します。
- 通帳で「同じ売掛先から過去に入金があるか」を確認
- メールやチャットで「業務内容・金額・納期などについての合意」があるかを確認
- 売掛先企業の情報(所在地、事業内容、登記情報など)やインボイス登録状況を確認
これらの情報が揃って初めて、「その売掛金が実際に存在しており、期日に支払われる可能性が高い」と判断できます。その結果として、請求書金額の一部を先に支払うことが安全な取引となるため、請求書だけでの審査通過は現実的ではありません。
書類が少なくても通りやすいフリーランスの共通点
必要書類が比較的少なくても審査に通りやすいフリーランスには、次のような共通点があります。
- 売掛先が法人であり、継続的な取引がある
- 会計ソフトとファクタリングサービスが連携しており、取引履歴をまとめて確認できる
- 過去の入金実績が安定しており、金額や入金サイクルに大きなブレがない
フリーランス向けのファクタリングで「請求書だけでOK」という宣伝は、あくまで簡略化した表現であり、現場レベルでは通帳の入出金明細や本人確認書類、取引を裏づけるメール・チャット履歴など、複数の資料を組み合わせて取引実態や売掛先の信用力を確認する流れが一般的です。とくに少額・即日対応をうたうサービスほど、表向きの手軽さとは裏腹に、AI審査や金融データ連携を通じて細かいチェックが行われています。
一方で、売掛先が法人でインボイス登録済み、継続的な取引があり、過去の入金実績が通帳から確認できるケースでは、必要書類が抑えられ、比較的スムーズに現金化まで進むこともあります。逆に、「請求書のみ」「審査ほぼ不要」「誰でもOK」といった過度なキャッチコピーの裏側には、高い手数料や厳しい償還条件が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

