ファクタリングの仕訳の基本を押さえよう
売掛金を現金化する手段として知られるファクタリングは、資金繰りの改善に役立つ一方、仕訳処理で戸惑う方が少なくありません。とくに「融資との違い」「売掛金をいつ消すか」「手数料をどの勘定科目で処理するか」といった点があいまいなままだと、売掛金の二重計上や負債の水増し、手数料の経費計上漏れなど、決算書の数字が実態とかけ離れた状態になりがちです。
本記事では、「ファクタリング 仕訳」をテーマに、2社間・3社間の違いから、基本の仕訳パターン、会計ソフトでの入力イメージ、よくあるミスの修正方法までを順序立てて整理します。具体的な金額例や勘定科目も示しながら解説しますので、「とりあえずこう処理してきた」という状態から一歩進んで、自信を持って帳簿を組み立てたい方に役立つ内容を目指します。
ファクタリングとは何か:融資との違い
ファクタリングとは、請求書や売掛金などの「将来お金が入ってくる権利(売掛債権)」をファクタリング会社に買い取ってもらい、手数料を差し引いた金額を先に受け取る取引をいいます。
ポイントは、「借金」ではなく「債権の売買」であるという点です。
- 融資(銀行借入など)
- お金を借りる取引
- 会計上は「借入金」などの負債が増える
- 元本と利息を返済する義務が残る
- ファクタリング
- 売掛債権を売却(譲渡)する取引
- 会計上は「売掛金を減らし、現金を増やす」処理が中心
- 手数料(売却損)を支払うが、原則として返済義務はない
この違いが、そのまま仕訳にも反映されます。
融資であれば「借入金/現金」、ファクタリングであれば「現金・売却損/売掛金」といったように、負債が増えるかどうかが決定的な違いです。
欧米では古くから中小企業の資金調達手段として利用されており、日本でも1990年代以降に普及してきました。近年は、インボイス(請求書)や注文書など、売掛金の前段階を対象とするサービスも増えており、「インボイスファイナンス」「注文書ファクタリング」と呼ばれています。いずれも本質的には「将来の代金回収権を売って、早めに現金を得る」点で共通しています。
なぜファクタリングの仕訳が重要なのか
ファクタリングの取引は、通常の売上・入金よりも構造が複雑です。
- 売上計上時点で「売掛金」が発生している
- その売掛金を別の会社(ファクタリング会社)に売却する
- 元の売掛先からの入金が、誰宛に・どこへ入るのかが取引形態で異なる
このため、仕訳を誤ると次のような問題が起きやすくなります。
- 売掛金の二重計上や消し忘れ
- 実態とかけ離れた負債残高となる
- 手数料を経費計上し忘れ、税金を余分に支払ってしまう
- 決算書の説明がつかず、税務調査で指摘を受ける
ファクタリングは税務上も通常の取引と同様に扱われますが、「いつ・どの名目で費用になるか」「売掛金がいつ消えるか」を正しく理解しておく必要があります。
特に2社間ファクタリングでは、売掛先からの入金が一度自社を経由したうえでファクタリング会社へ渡るため、預り金・未払金などを用いた一時的な債務の計上が重要なポイントになります。ここがあいまいだと、売掛金や現金の残高が実態と合わなくなりやすいので注意が必要です。
ファクタリングの基本的な会計処理の考え方
ファクタリングは「債権の売却」か「借入」か
ここでは、中小企業・個人事業主が利用する一般的なファクタリングを前提とします。
- 多くのファクタリングサービスは、「売掛債権の譲渡(売却)」という契約形態です。
- この場合、会計処理も売掛金の売却として行うのが基本です。
典型的な仕訳は次のとおりです(売掛金100万円、手数料10万円、入金90万円の場合)。
売掛金をファクタリングしたとき
借方:普通預金 900,000
借方:売上債権売却損(又は支払手数料)100,000
貸方:売掛金 1,000,000
一方で、一部には「形式は債権譲渡だが、実質は貸付に近い」契約も存在します。売掛債権を担保として設定し、ABL(動産・売掛債権担保融資)のように返済義務を伴う資金供給になっているケースです。このような場合は、会計・税務上「借入金」として処理する余地もあるため、契約書で「返済義務の有無」「償還義務」「償還方法(ノンリコースかどうか)」などを確認する必要があります。
ただし、会計初心者の段階では、基本形=債権売却として処理する前提で考えた方が理解しやすいでしょう。
貸借対照表・損益計算書への影響
ファクタリングを行うと、決算書には次のような影響があります。
- 貸借対照表(B/S)
- 「売掛金」が減少する
- 「現金・預金」が増加する
- 負債は増えない(借入ではない前提)
- 資産構成を「売掛金から現金へ」組み替える取引といえる
- 債務超過・借入過多の企業でも、負債を増やさずに資金調達できる点がメリットとなる
- 損益計算書(P/L)
- 手数料や売却損を、営業外費用または販売費及び一般管理費として計上する
- 利益は手数料分だけ減少する
- 売上高には影響しない(売上は売上計上時点ですでに認識済み)
つまりファクタリングは、キャッシュフローを前倒しする代わりに、手数料というコストを負担する取引です。
金融機関からの借入とは異なり、「利息」ではなく「売却損・手数料」として費用計上されるため、金利との比較を意識しつつコスト感を把握しておくと、利用判断がしやすくなります。
よくある誤解と誤った仕訳の例
会計初心者に多い誤りは次のようなものです。
- ファクタリングで受け取ったお金を「借入金」として処理してしまう
- 元の売掛金を消さないまま、実際の入金も売掛金回収として処理し、二重計上になる
誤った仕訳例(売掛金100万円をファクタリングして90万円受け取った場合):
借方:普通預金 900,000
貸方:借入金 900,000 ←誤り
このように処理すると、
- 売掛金が帳簿上に残ったままになる
- 借入金という負債が架空に増える
- 実態からかけ離れた決算書になる
といった問題が生じ、決算や税務調査での説明が困難になります。
「売掛金を消すこと」がファクタリング仕訳の大前提であると覚えておくとよいでしょう。
また、ファクタリング会社の明細・契約書・入出金の流れを合わせて確認しながら仕訳を行う習慣をつけることで、この種の誤りは大きく減らせます。
2社間ファクタリングの仕訳
2社間ファクタリングの取引の流れ
2社間ファクタリングは、「自社」と「ファクタリング会社」だけで完結し、売掛先には通知しない形態です。一般的な流れは次のとおりです。
- 自社がA社に商品を販売し、売掛金1,000,000円が発生する
- A社への請求書をもとに、ファクタリング会社に売掛金を譲渡する
- ファクタリング会社から、手数料控除後の900,000円が入金される
- 支払期日になったら、A社が自社の口座へ1,000,000円を支払う
- 自社は受け取った1,000,000円をファクタリング会社に支払う(または相殺される)
2社間では、売掛先は自社に支払うつもりでいるため、A社との関係は変わりません。
そのため、仕訳では「ファクタリング会社への債務」を一時的にどのように記録するかがポイントになります。
また、売掛先は債権譲渡の事実を知らないため、入金遅延や未入金が生じた場合に、ファクタリング会社との間で「どちらがリスクを負うか」がトラブルになりやすい形態でもあります(契約上、償還請求がある場合は、実質的に借入に近い性格が強くなります)。
売掛金100万円・手数料10万円の具体的な仕訳
売掛金1,000,000円を手数料100,000円でファクタリングした場合の仕訳例です。
(1)売掛金発生時(通常の売上仕訳)
借方:売掛金(A社) 1,000,000
貸方:売上 1,000,000
(2)売掛金をファクタリング会社に譲渡し、900,000円を受け取った時
借方:普通預金 900,000
借方:売上債権売却損(又は支払手数料)100,000
貸方:売掛金(A社) 1,000,000
この時点で、帳簿上はA社に対する売掛金は消え、代わりに現金と売却損(または手数料)が計上されます。
(3)A社からの入金およびファクタリング会社への支払い
A社からは自社口座に1,000,000円が入金され、その後ファクタリング会社へ1,000,000円を支払います。
【A社から入金時】
借方:普通預金 1,000,000
貸方:預り金(又は未払金(ファクタリング会社))1,000,000
【ファクタリング会社へ支払い時】
借方:預り金(又は未払金(ファクタリング会社))1,000,000
貸方:普通預金 1,000,000
すでに売掛金は消しているため、A社からの入金は「売掛金回収」ではなく、「ファクタリング会社への支払いのために一時的に預かった資金」として扱う点が重要です。
この預り金・未払金を適切に振り替えておかないと、貸借対照表上に残高が残り続け、実態との整合が取れなくなります。月次での消し込みを徹底しましょう。
手数料の勘定科目の選び方
ファクタリング手数料に用いる勘定科目は、社内方針に応じて以下のように使い分けられます。
- 売上債権売却損
- 売掛債権を額面より低く売却したことによる損失として表示
- 金額が大きい場合や、ファクタリング利用が多い企業に向く
- ファクタリング利用状況やコストを経営者が把握しやすい
- 支払手数料
- 他の金融手数料や振込手数料などとまとめて処理したい場合に向く
- 経理処理を簡素にしたい小規模事業者にも適している
どちらを用いても税務上の取り扱いは通常同じ(損金算入可能な費用)です。ただし、科目を統一して継続適用することが重要です。
毎期の処理方法がばらつくと、決算書の比較がしづらくなるだけでなく、税務調査で「恣意的な利益調整ではないか」と疑われる要因にもなり得ます。早めに方針を決めておきましょう。
3社間ファクタリングの仕訳
2社間との違いとリスクの特徴
3社間ファクタリングは、「自社」「ファクタリング会社」「売掛先(A社)」の3者で契約する形態です。
- A社は、売掛金がファクタリング会社に譲渡されたことを承知しており、
- 支払期日には、A社がファクタリング会社に直接支払う形になります。
このため、
- 自社は売掛金の未回収リスクから解放されやすい
- 2社間に比べ、手数料率が低めになることが多い
- A社からの入金を経由しないため、仕訳が比較的シンプルになる
といった特徴があります。
売掛先から見ても、正式な債権譲渡通知があるため二重払いリスクが抑えられ、法的な透明性も高い形態です。一方で、売掛先の同意が前提となるため、取引先との関係によっては利用しづらい場合もあります。
売掛金譲渡時の仕訳例
3社間ファクタリングでも、売上計上時の仕訳は2社間と同様です。
(1)売掛金発生時
借方:売掛金(A社) 1,000,000
貸方:売上 1,000,000
(2)売掛金を3社間ファクタリングで譲渡し、900,000円を受け取った時
借方:普通預金 900,000
借方:売上債権売却損(又は支払手数料)100,000
貸方:売掛金(A社) 1,000,000
ここまでは2社間と同じです。
売掛先から直接支払われた場合の処理
3社間では、支払期日にA社からファクタリング会社へ直接1,000,000円が支払われるため、自社の帳簿上は何も動きません。
売掛金はすでにファクタリング時点で消し込まれているからです。
【A社→ファクタリング会社への支払い】
自社の仕訳:なし
このように、3社間ファクタリングは入金処理が少なく、仕訳がシンプルです。
月次・年次決算での照合も「売掛金発生→ファクタリング譲渡」の流れを追えばよく、2社間のように預り金残高を管理する手間が少ない分、経理負担が軽くなります。
ケース別のファクタリング仕訳
少額のスポット利用の場合
例:売掛金200,000円を手数料20,000円で単発ファクタリングしたケース。
【売掛金発生時】
借方:売掛金 200,000
貸方:売上 200,000
【ファクタリング利用時】
借方:普通預金 180,000
借方:支払手数料 20,000
貸方:売掛金 200,000
スポット利用であっても、基本的な考え方は同じです。売掛金を消し、手数料を費用計上します。
中小企業やフリーランスでは「一時的な資金不足を補うために一度だけ利用する」というケースも多いですが、仕訳の基本形は変わりません。
複数の売掛金を継続的にファクタリングする場合
例:複数取引先の売掛金合計3,000,000円を一括ファクタリングし、手数料150,000円差引後の2,850,000円を受け取ったケース。
【売掛金発生時(取引先別に通常どおり)】
借方:売掛金(A社)…
借方:売掛金(B社)… など
【ファクタリング利用時(合算して処理)】
借方:普通預金 2,850,000
借方:売上債権売却損 150,000
貸方:売掛金(A社) …
貸方:売掛金(B社) …
貸方:売掛金(C社) …(合計3,000,000)
この場合、売掛先ごとの内訳を構成台帳や補助元帳で管理することが特に重要です。
ファクタリング会社からも、譲渡する売掛債権の明細(取引先名・請求書番号・期日など)の提出を求められることが多いため、日頃から構成台帳を整えておくと審査がスムーズになり、手数料面でも有利に働く可能性があります。
手数料を後払いする場合(後払い手数料)
一部のファクタリングでは、次のような形態もあります。
- 利用時に売掛金の満額(100%)を受け取る
- 後日、手数料のみをファクタリング会社へ支払う
例:売掛金1,000,000円を全額受け取り、翌月に手数料100,000円を支払うケース。
(1)ファクタリング利用時
借方:普通預金 1,000,000
貸方:売掛金 1,000,000
(2)翌月、手数料の請求書受領時
借方:支払手数料 100,000
貸方:未払金(ファクタリング会社)100,000
(3)手数料支払い時
借方:未払金(ファクタリング会社)100,000
貸方:普通預金 100,000
このように、「手数料が確定したタイミング」で費用を計上し、支払いまでは未払金で管理することで、発生主義に沿った処理になります。
電子記録債権(でんさい)をファクタリングする場合
電子記録債権(でんさい)をファクタリングする場合も、基本的な考え方は同じですが、勘定科目は「売掛金」ではなく「電子記録債権」を用いるケースが多くなります。
例:電子記録債権1,000,000円を手数料50,000円で譲渡し、950,000円受け取った場合。
【債権発生時】
借方:電子記録債権 1,000,000
貸方:売上 1,000,000
【ファクタリング利用時】
借方:普通預金 950,000
借方:売上債権売却損(又は支払手数料)50,000
貸方:電子記録債権 1,000,000
電子記録債権は期日管理や回収状況をシステム上で把握しやすい一方、勘定科目を誤って「売掛金」のまま処理していると、実態と帳簿の整合性が崩れやすくなります。発生時から「電子記録債権」勘定で整理しておくと、ファクタリング時の処理もスムーズです。
個人事業主・フリーランスがファクタリングを利用する場合
会計ソフトでの入力イメージ(freee・マネーフォワード等)
クラウド会計ソフトを使用する場合も、基本的な考え方は同じです。
- 請求書発行時に売上を計上する
- 取引:売掛金 100%/売上 100%
- ファクタリングで入金されたとき
- 取引:普通預金(実際の入金額)/売掛金(請求額)
- 差額(手数料)を「支払手数料」または「売上債権売却損」として登録
銀行明細を自動取り込みするタイプのソフトでは、
- 「ファクタリング会社からの入金」を、売掛金回収ではなく「売掛金譲渡」として登録する
- 明細登録時に、差額を手数料として処理する自動仕訳ルールを設定する
といった運用が有効です。
オンライン完結型のファクタリングでは、証憑がPDFや画面キャプチャで完結することが多いため、会計ソフトの備考欄に請求書番号やファクタリング会社名をメモしておくと、後からの照合が容易になります。
青色申告・白色申告での注意点
- 青色申告の場合
- 発生主義で記帳する必要があるため、「売掛金の発生」と「ファクタリングによる譲渡」を正しく区別することが求められます。
- ファクタリング手数料も、他の経費と同様に必要経費として認められます。
- 売掛金の補助元帳や構成台帳を整備しておくと、青色申告特別控除(65万円控除)の帳簿要件の充実にもつながります。
- 白色申告の場合
- おおむね現金主義であっても、ファクタリングの実態(債権売却)をメモや簡易帳簿に記録しておくとよいでしょう。
- 将来的に青色申告へ移行する可能性がある場合は、簡便でも売掛金ベースの台帳をつけておくと移行がスムーズになります。
いずれの場合も、ファクタリングの入金を単純に「売上」とだけ記録してしまうと、同一売上が二重計上されているように見えるおそれがあります。「どの請求書をファクタリングしたのか」が分かるよう、請求書との紐づけを残しておくことが重要です。
家計と事業が混在している場合の整理方法
フリーランスで事業用と家計用の口座が混在している場合は、特に次の点に注意が必要です。
- ファクタリングの入金は、できる限り事業用口座で受け取るようにする
- 混在せざるを得ない場合は、
- 「事業主借」「事業主貸」勘定を用いて、事業と家計を区分する
- ファクタリング関連の入出金には必ず取引メモを残す
ファクタリングは一時的に大きな入金が発生するため、家計と混在すると税務署から「売上の申告漏れ」や「事業実態の不明瞭さ」を指摘されるおそれがあります。
口座の分離とメモの徹底が、トラブル防止につながります。
ファクタリング仕訳でよくあるミスと修正方法
売掛金の消し忘れ・二重計上
典型的なミスは次のケースです。
- ファクタリング利用時に売掛金を消し忘れる
- その後、売掛先からの入金を「売掛金回収」として仕訳してしまう
この場合、売掛金残高が実際より多くなり、売上や現金も二重計上されるおそれがあります。
当期内に気づいた場合の修正方法
- 誤って計上した仕訳を逆仕訳(取り消し)する
- 正しい仕訳を改めて計上する
例:本来はファクタリングとして処理すべきところを、売掛金回収として仕訳してしまった場合は、誤った「借方:普通預金/貸方:売掛金」を取り消し、正しい「借方:普通預金+売却損/貸方:売掛金」に訂正します。
月次・年次の締めの際に、構成台帳や売掛金補助元帳と総勘定元帳の「売掛金残高」を照合することで、この種のミスは早期に発見しやすくなります。
手数料の経費計上漏れ
ファクタリング手数料の処理漏れがあると、利益が実際より多くなり、法人税や所得税を余分に支払うことになります。
- 気づいた時点で、次のように追加仕訳を行います。
- 借方:支払手数料
- 貸方:未払金(又は普通預金)
支払いと同時に修正する場合は、
借方:支払手数料
貸方:普通預金
とすれば対応できます。
後払い手数料の場合は、請求書自体を経理で見落としているケースもあるため、「ファクタリング会社からの請求書一覧」と処理済み仕訳を年次で突き合わせて確認しておくと安心です。
過年度の誤りを発見した場合
過去の決算期の誤りに気づいた場合、
- 金額が大きければ「過年度遡及修正」を検討する必要がありますが、
- 個人事業主や小規模法人では、実務上、当期にまとめて修正する対応も行われています。
当期で修正する一例としては、
- 過年度の誤りによる増減を「雑損失」「雑収入」などで処理し、
- 仕訳メモに「○期分ファクタリング手数料の未計上分」などと明記する
といった方法があります。
金額が大きい場合や決算書の信頼性に影響しそうな場合は、税理士など専門家に相談のうえ対応方針を決めてください。ファクタリングは1件あたりの金額が比較的大きいことが多く、数件の誤りでも影響が無視できないケースがあります。
構成台帳・補助元帳の作成とチェックポイント
構成台帳に記録しておくべき情報
構成台帳とは、ファクタリングに供出する売掛債権の内訳を一覧にした台帳です。ファクタリング会社からも提出を求められることが多く、次のような情報を整理します。
- 取引先名
- 請求書番号
- 請求日・売上日
- 支払期日
- 債権金額(税抜・税込の区分を含む)
- 回収予定日(支払サイト)
- 実際の回収状況(入金日・入金額)
構成台帳は、ファクタリング会社への説明資料であると同時に、自社の売掛金管理台帳としても有効です。債権の正当性や回収見込みが明確になっているほど、審査スピードや手数料率にも良い影響が出やすいため、日常的に整備しておくことが重要です。
エクセルで作る構成台帳の項目例
エクセル等で管理する場合、最低限次の列を用意しておくと便利です。
- No.
- 取引先コード・取引先名
- 請求書番号
- 売上日
- 支払期日
- 請求金額
- ファクタリング利用日
- ファクタリング会社名
- 譲渡金額(受取額)
- 手数料額
- 手数料率
- 回収方法(2社間/3社間)
- 売掛先入金日
- 備考(遅延・トラブル等)
これらを整備しておくことで、
- 「どの売掛金を、いつ、どの条件でファクタリングしたのか」
- 「売掛先の支払遅延や未回収の傾向」
を一目で把握でき、資金繰り管理や与信管理にも役立ちます。
月次・年次で確認すべき事項
月次決算や年次決算のタイミングでは、次の点を確認してください。
- 構成台帳の売掛金残高と、試算表の売掛金残高が一致しているか
- ファクタリング済みの債権が、売掛金残高として残っていないか
- ファクタリング手数料がすべて経費計上されているか
- 売掛先からの入金が預り金(又は未払金)経由でファクタリング会社へ適切に振り替えられているか(2社間の場合)
併せて、
- インボイスの請求書番号と構成台帳の番号が対応しているか
- ファクタリング会社との契約書・入金明細と、台帳・仕訳の金額が一致しているか
といった点も確認しておくと、税務調査や金融機関への説明資料としての信頼性も高まります。
税務上のポイント:ファクタリング手数料と損金算入
手数料が経費となるタイミング
法人・個人を問わず、原則として、
- ファクタリング契約が成立し、手数料額が確定した時点で費用となります。
後払い手数料の場合でも、
- 手数料の請求書を受領した時点
- または支払期日が到来した時点
で費用計上するのが基本です。
継続的にファクタリングを利用している場合には、「当月分ファクタリング手数料一覧」を作成し、請求書と突き合わせながら月次で一括仕訳する運用にすると、処理漏れを防ぎやすくなります。
消費税の取り扱い
ファクタリング手数料は、一般に消費税の非課税取引(金融取引)に該当するケースが多くなります。ただし、サービス内容や契約形態によって取り扱いが異なる可能性もあるため、実務上は以下を確認してください。
- ファクタリング会社の請求書における「消費税」の記載内容
- 「消費税対象外」「非課税」等の表記があるかどうか
請求書で非課税・対象外とされている場合は、会計ソフト上でも「対象外」として登録します。
インボイス制度下では、ファクタリング手数料はもともと適格請求書発行義務のない取引(金融取引)である場合が多いため、「インボイスがない=経費にできない」と誤解しないよう注意が必要です。
税務調査でチェックされやすい点
税務調査においては、次のような点が確認されやすくなります。
- 実質的には融資に近い取引なのに、債権譲渡として処理していないか
- ファクタリング手数料を別の勘定科目へ付け替え、恣意的に利益調整をしていないか
- 売掛金発生とファクタリング利用のタイミング・金額が適切に対応しているか
- 売掛金の二重計上や消し忘れがないか(特に2社間)
正しい仕訳と台帳管理ができていれば、過度に心配する必要はありません。
むしろ、ファクタリングの利用履歴・契約書・構成台帳が整理されていることで、税務署や金融機関からの信頼度が高まる場合もあります。
インボイス制度とインボイスファイナンス
インボイス発行事業者がファクタリングを利用する際の注意点
インボイス制度(適格請求書等保存方式)導入後も、ファクタリングそのものの会計処理は基本的に従来どおりです。
ただし、次の点を整理しておくことが重要です。
- 売掛金の前提となる取引について、適切なインボイスを発行・保存しているか
- インボイス上の請求書番号と、構成台帳の請求書番号が対応しているか
インボイス対応の請求書データをクラウド上で管理している場合、そのデータがインボイスファイナンスの審査資料として直接活用されることも増えています。帳簿と請求データの連携が、そのまま資金調達のスピードにも影響するようになりつつあります。
インボイスファイナンスの仕組みと仕訳
インボイスファイナンスとは、インボイス(請求書)情報をベースにした資金調達の総称であり、その中にファクタリングも含まれます。仕訳の考え方は従来のファクタリングと同じです。
- 売掛金をインボイスファイナンス会社に譲渡する
- 手数料を差し引いた現金を受け取る
- 売掛金を消し、現金と売却損(又は手数料)を計上する
クラウド会計ソフトや請求書発行システムとAPI連携し、請求書データから自動で債権情報を取り込み、そのままファクタリングやインボイスファイナンスと連携するサービスも登場しています。今後は、仕訳処理まで自動化されていくことが期待されます。
新しいファクタリング形態と会計処理の方向性
今後は次のような新しいタイプのファクタリングが増えると見込まれています。
- 納品前の「注文書ファクタリング」
- BtoBプラットフォーム上で完結するオンライン型ファクタリング
- AI審査やブロックチェーンを用いた債権管理
会計処理の基本は従来どおり「債権の売却」ですが、
- 実質的に借入に近い性質を持つもの
- 手数料ではなく利息に近い形で対価を支払うもの
なども登場する可能性があります。このため、契約書をよく読み、「売掛金の譲渡なのか、融資なのか」を見極めたうえで仕訳方針を決める必要があります。
特に、ノンリコース(償還請求権なし)かリコース(償還請求権あり)かによってリスクの所在や実質的な性格が変わるため、判断に迷う場合は税理士・会計士へ相談し、早めに会計方針を固めておくと安心です。
実務にすぐ使えるテンプレート・運用例
仕訳パターンを一覧化した「チートシート」例
エクセルやノートなどに、次のような簡易チートシートを作成しておくと便利です。
- 売掛金ファクタリング(2社間)
- 利用時:普通預金+売上債権売却損(又は支払手数料)/売掛金
- 売掛先入金時:普通預金/預り金(又は未払金)
- ファクタリング会社への支払い時:預り金(又は未払金)/普通預金
- 売掛金ファクタリング(3社間)
- 利用時:普通預金+売上債権売却損(又は支払手数料)/売掛金
- 売掛先からファクタリング会社への支払い:仕訳なし
- 後払い手数料型
- 利用時:普通預金/売掛金
- 手数料請求時:支払手数料/未払金
これらを会計ソフトの「仕訳テンプレート」や自動仕訳ルールとして登録しておくことで、入力ミスを減らせます。「売上債権売却損」を使うパターンと「支払手数料」を使うパターンを別テンプレートにしておくと、社内方針に応じて選択しやすくなります。
構成台帳のひな型イメージ
エクセルで作成する構成台帳の例は次のとおりです。
| No | 取引先名 | 請求書番号 | 売上日 | 支払期日 | 請求金額 | ファクタリング利用日 | 譲渡金額 | 手数料 | ファクタリング会社 | 回収方法(2/3社) | 売掛先入金日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | A社 | INV-0001 | 2024/01/10 | 2024/02/10 | 1,000,000 | 2024/01/20 | 900,000 | 100,000 | ○○ファクタリング | 2社間 | 2024/02/10 |
このフォーマットに従って案件ごとに1行ずつ入力していきます。
将来クラウド会計ソフトや請求書発行システムを導入する場合にも、CSV形式でインポートしやすく、システム連携にも活用できます。
月次チェックリストによる運用フロー例
月次の運用フローとして、次のチェックリストを回すとファクタリング関連の処理が安定します。
- 当月のファクタリング利用案件をすべて構成台帳に記録したか
- 構成台帳の合計金額と、仕訳済みの売掛金譲渡額が一致しているか
- ファクタリング手数料をすべて経費計上しているか
- 売掛先からの入金と、ファクタリング会社への支払い(2社間)が正しく対応しているか
- 売掛金残高と、構成台帳・補助元帳の残高が一致しているか
- インボイス番号・請求書番号の紐づけに漏れがないか
これらをルーチン化することで、ファクタリングの仕訳だけでなく、売掛金全体の管理精度も高まり、資金繰り表や試算表の正確性向上にもつながります。その結果、どのタイミングでどの程度ファクタリングを活用すべきかといった経営判断もしやすくなります。
ファクタリングの仕訳を押さえるうえでの核となるのは、「融資ではなく債権の売却」であるという前提と、「売掛金をいつ・どのように消すか」です。2社間・3社間いずれでも、売掛金の発生は通常どおり記帳し、その後のファクタリング利用時に「現金(預金)+手数料/売掛金」として売掛金を帳簿から外します。2社間の場合は、売掛先からの入金が自社を経由するため、「預り金・未払金」を使った一時的な債務計上がポイントになります。
手数料科目は「売上債権売却損」か「支払手数料」に統一して運用し、構成台帳・補助元帳で売掛金の内訳とファクタリング済み分を整理しておくと、決算や税務調査、金融機関への説明もしやすくなります。会計ソフトの仕訳テンプレートや自動仕訳ルールと組み合わせれば、仕訳漏れや二重計上はかなり防げます。この記事で示した基本パターンをベースに、自社の取引形態や契約内容に合わせて仕訳方針を明確にしておくと、日々の記帳から決算まで一貫した処理が行えるようになります。
