ファクタリングを活用する企業は、単なる資金繰りの苦しい会社だけではありません。支払サイトが長いBtoB取引を抱えつつ、成長投資も同時に進めたい中小・中堅企業にとって、売掛金を現金へ変える手法は、銀行融資とは異なる選択肢として注目を集めています。本記事では、業界別の導入企業例や活用パターンを整理し、貴社に合う使い方を考えるためのヒントをお伝えします。
ファクタリングを導入している企業一覧【まずは全体像】
ファクタリングを導入する企業の共通点
ファクタリングを導入する企業に共通するのは、BtoB取引が中心で支払サイトが長く、季節変動や大型案件で一時的に資金需要が高まりやすい中小〜中堅企業が多い点です。売掛先の信用力が高ければ、赤字や担保不足の企業でも利用できるケースがあります。
また、銀行融資が伸びにくい創業期・成長期の企業や、既存の借入枠をこれ以上膨らませたくない企業が、「借入ではないオフバランスの資金調達」として選ぶ傾向があります。
特に、建設・製造・卸売・医療介護など、売掛金の回収までの期間が長くなりやすい業種で導入が進んでおり、支払サイト30〜90日の請求書を資金化するケースが一般的です。
ファクタリングを導入するメリット・デメリット
ファクタリングの主なメリットは、売掛金を即日〜数日で現金化できることと、借入ではないため貸借対照表上の負債を増やさず、バランスシートをクリーンに保ちやすい点です。
一方で、デメリットとしては、手数料負担が発生し、年率換算すると金利水準としては高めになりやすいことが挙げられます。また、2社間ファクタリングでは売掛先の倒産・支払遅延時に利用企業が負担する可能性がある「償還請求権(リコース)」の有無が重要な論点となります。売掛先への通知が行われる3社間ファクタリングでは、取引関係に影響が出る可能性もあります。
特に3社間ファクタリングは、売掛先からファクタリング会社へ直接入金されるため回収リスクが小さく、その分手数料は比較的低く抑えられます。一方、2社間ファクタリングはスピードと秘密保持を重視できる反面、手数料率は高くなりがちです。
なお、ファクタリングの手数料は金利ではなく「売掛債権の売買手数料」であり、貸金業法に基づく金利規制の対象外である点も理解しておく必要があります。
導入企業を探す前に押さえておきたい注意点
ファクタリング会社を選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認してください。
- 業者の信頼性(実績・評判)
- 手数料体系・その他費用の明瞭さ
- 償還請求権(リコース)の有無
- 契約書の内容の明確さ
- 債権二重譲渡を防ぐ仕組みの有無
あわせて、オンライン完結型か対面重視か、審査基準(売掛先重視か、自社財務も重視するか)、入金スピード(最短即日か数日か)など、運用面の条件も重要です。
悪質業者による高額手数料、不透明な追加費用、威圧的な回収行為などのトラブルも報告されているため、金融機関や公的機関が発信する注意喚起の内容も参考にしつつ、複数社から見積もりを取り、条件を比較検討することが安全です。
業界別:ファクタリング導入企業一覧
建設・土木業界のファクタリング導入企業
建設業でファクタリングが選ばれる理由
建設業では、工事完了後の検収待ちや長い支払サイトにより資金繰りが厳しくなりやすく、工事代金の即時資金化ニーズが高い傾向にあります。
さらに、元請・下請の多段階構造の中で、元請からの入金を待つ間にも協力業者への支払い、材料費、人件費などが発生します。そのため、工事代金の請求書をファクタリングで現金化し、キャッシュフローのギャップを埋める使い方が広がっています。
導入企業の具体例と導入パターン
中小ゼネコンや専門工事業者が、受注代金の売掛金を対象に3社間・2社間ファクタリングを利用する例が多く見られます。
公共工事や大手デベロッパー・プラント会社向けの売掛債権は信用力が高く、3社間ファクタリングで比較的低コストに資金化されるケースが目立ちます。一方で、元請からの入金が遅れがちな下請・孫請企業は、取引先に知られない2社間ファクタリングを利用し、短期的な運転資金を確保するパターンも一般的です。
建設業がファクタリング会社を選ぶ際のチェックポイント
建設業がファクタリング会社を選ぶ際は、以下の点を重視しましょう。
- 大型案件の分割対応の可否
- 支払予定の裏取り(入金確認)能力
- 手数料と償還条項(リコース)のバランス
- 前受金・出来高請求など建設業特有の契約形態への理解
- 請負契約書・注文書・出来高証明などの確認プロセスのスムーズさ
工期が長期化する案件では継続的に利用することも多いため、1件ごとの条件だけでなく、「継続取引として見た場合の総コスト」も比較検討してください。
製造業界のファクタリング導入企業
製造業の資金繰りと売掛債権の特徴
製造業では、納期前後に在庫や仕入れ資金の負担が大きくなりやすく、売掛金の早期現金化によって運転資金を回すニーズが高い傾向にあります。
材料費・外注費・人件費が先行して発生し、製品出荷から入金まで数カ月かかるケースでは、売掛債権を資金に変えることで、銀行融資だけに頼らない柔軟な運転資金の確保が可能となります。
導入企業の具体例とよくある使い方
部品メーカーや下請企業が、大手商社向けの売掛金を売却して資金を確保するケースが典型例です。
自動車・電子部品など、特定の大手メーカーに納入している中小企業が、安定した売掛先の信用力を活かして3社間ファクタリングを利用し、比較的低い手数料で繰り返し資金化する事例も増えています。また、新規ラインの立ち上げや設備更新期における一時的な資金需要を補う目的で、スポット利用するケースもあります。
部品メーカー・下請け企業が注意すべき点
部品メーカーや下請け企業にとっては、売掛先の信用評価が審査の鍵となります。特定の取引先への依存度が高い場合は、取引先倒産リスクなどを踏まえ、取引先の分散も検討すべきです。
また、長期にわたり高い手数料を払い続けると利益を圧迫するため、「いつまで・どの程度の売掛金をファクタリングに回すのか」を事前にシミュレーションしておく必要があります。銀行のABL(売掛債権担保融資)など、他の資金調達手法との組み合わせも含めて検討することが重要です。
卸売・商社・小売業界のファクタリング導入企業
仕入代金と売掛回収のタイムラグへの対応
卸売・商社・小売業界では、大量仕入れに伴う前払い負担を、売掛金の早期現金化によって補い、資金の回転率を改善するニーズがあります。
特に、繁忙期やセール時期前の在庫積み増しにより一時的に資金需要が高まる際、ファクタリングでキャッシュポジションを厚くしておくことで、仕入の機会損失を防ぎ、売上機会を最大化する狙いがあります。
導入企業の具体例と利用シーン
食品卸や総合商社、小売企業の卸部門が、繁忙期の仕入資金に充てる目的でファクタリングを利用する事例が多く見られます。
具体的には、輸入商社が海外サプライヤーへの前払いと国内顧客からの後払いのギャップを埋めるために、輸入代金相当額の売掛債権を資金化するケースがあります。また、ドラッグストアや家電量販店向けに納品する中小卸企業が、販促キャンペーン前の仕入増強に備え、一時的にファクタリングを利用するケースもあります。
小売・EC事業者に向くファクタリングのタイプ
小売・EC事業者の場合は、小口債権に対応できるサービスや、クラウド型(オンライン完結)ファクタリングが使いやすい傾向があります。
店舗とECの両方で多数の取引先や決済事業者を抱える場合、請求書や取引データをオンラインで連携し、まとめて資金化できるFinTech系サービスとの相性が良いといえます。審査から入金までのスピードが速く、手続きも簡便な点が評価されています。
IT・広告・人材サービス業界のファクタリング導入企業
IT・広告・人材業界に多い「支払いサイトの長さ」の課題
IT・広告・人材サービス業界では、請求・検収プロセスが長期化し、その間に必要な成長投資に資金を回しにくいという課題が見られます。
システム開発や大規模広告案件では、納品検収や成果確認に時間を要するうえ、支払サイトも60〜90日と長めになることが多く、その間もエンジニア・クリエイター・派遣スタッフへの給与支払いが継続します。
導入企業の具体例とクラウドファクタリング活用事例
広告代理店や人材派遣会社がクラウド型ファクタリングを活用し、広告出稿費や給与支払いの資金に充てる事例が増えています。
また、SaaSベンダーやITスタートアップが、VCからの出資や銀行融資と併用しつつ、特定の大口顧客向け請求書のみを選んでオンラインで売却するケースも見られます。書類提出から審査までがWeb上で完結し、最短即日〜翌日に入金されるため、急なプロジェクト増加時にも柔軟に対応できます。
まとめ:どの企業がファクタリングに向いているのか
本記事では、ファクタリングを活用している企業の特徴と、業界ごとの具体的な利用パターンを整理しました。共通しているのは、「支払サイトが長いBtoB取引を抱えつつ、仕入・人件費・成長投資などの支出が先行しやすい企業」が、キャッシュフローのギャップを埋める手段として売掛金の資金化を選んでいる点です。
建設・製造・卸売・商社・小売・IT・広告・人材サービスといった幅広い業界で、中小〜中堅企業が、特定の大手取引先向け請求書や、繁忙期・大型案件に紐づく売掛金を対象に、スポット利用・継続利用の両面で使い分けています。3社間ファクタリングでコストを抑える方法もあれば、2社間ファクタリングでスピードと秘匿性を重視する形もあり、自社の資金需要と取引先との関係性に応じた選択が求められます。

