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エビデンスなしで利用できるファクタリングの実態

目次

「エビデンスなしで使えるファクタリング」の現実を正しく理解する

「エビデンスなしで使えるファクタリング」──資金繰りに追われていると、そんな言葉に心が揺れることはないでしょうか。通帳も決算書も見せずに、請求書だけで素早く現金化できるなら、これほど楽な話はありません。

しかし、売掛債権を買い取るファクタリングは、そもそも「その売掛金が本当に存在し、支払われるか」を見極める取引です。エビデンスを一切確認しないという宣伝文句には、どうしても無理が潜んでいます。

現実には、通帳や決算書は省略できても、請求書や取引メール、本人確認書類など、何らかの証拠を組み合わせて審査するサービスがほとんどです。

本記事では、「ファクタリング エビデンスなし」というキーワードの裏側にある仕組みとリスク、現実的にどこまで書類を減らせるのか、そして怪しい業者を避けるための見極め方を、具体例を交えながら整理していきます。エビデンスを減らしたい事情がある方ほど、一度立ち止まってお読みください。

エビデンスなしで利用できるファクタリングの実態

「エビデンスなし」のファクタリングとは?

「エビデンス」の意味と提出を求められる理由

ファクタリングにおける「エビデンス」とは、「その売掛金(請求書)が実在し、きちんと支払われる見込みがあること」を証明するための資料を指します。代表的なものは次のとおりです。

  • 通帳・入出金明細(売掛先からの入金履歴)
  • 請求書・見積書・発注書・納品書
  • 取引基本契約書・注文書・業務委託契約書
  • メール・チャットなどの取引連絡履歴
  • 決算書・試算表・総勘定元帳 など

中小企業・個人事業主向けファクタリングは、貸金業ではなく「売掛債権の譲渡契約」として扱われることが多く、多くのサービスがノンリコース(償還請求権なし)を前提としています。

ノンリコース契約では、売掛先が倒産したり支払わなかった場合でも、原則としてファクタリング会社は利用者に請求できません。そのため、売掛金が本物かどうか、支払われる可能性が高いかどうかを細かく確認しないと、ファクタリング会社側が丸損するリスクがあります。このリスク管理のために、エビデンスの提出が必須とされているのです。

近年は、メールやクラウド会計データなどの電子的なエビデンスも広く利用されるようになり、通帳コピーだけに依存しない審査モデルが普及しつつあります。ただし、「何も確認せずに資金を提供する」ことは、制度上もビジネス上もほぼ不可能と理解しておく必要があります。

通帳なし・決算書なし・契約書なしの違い

「エビデンスなし」とひと口に言っても、実際には次のようにレベルが分かれます。

  • 通帳なし
    「売掛先から確実に入金されているか」が見えない状態です。その代わりに、取引メール、発注書、納品書、会計ソフトの画面などで実在性を補うケースが増えています。
    オンライン完結型の小口ファクタリング(10〜100万円程度)では、「通帳不要・請求書+取引メールのみ」で審査するサービスも登場しています。
  • 決算書なし
    創業間もない企業や個人事業主に多いパターンです。決算書の代わりに、試算表や残高一覧表、直近の売上推移などで代替されることがあります。
    一部サービスでは、「確定申告書も不要・会計ソフトの出力だけでOK」というケースもあり、スタートアップやフリーランス向けにハードルが下げられています。
  • 契約書なし
    小規模な取引では正式な契約書を交わしていないことも多く、この場合は見積書+発注書+請求書+メール履歴の組み合わせで実態を確認します。
    継続取引であれば、「過去数件分の請求書+入金実績」が契約書代わりに評価されることもあります。

このように、「エビデンスなし」といっても、どの書類が出せないのかによって難易度が大きく変わります。通帳・決算書がなくても「請求書+メール+会計データ」がそろっていれば審査に通るケースもあれば、請求書以外ほとんど履歴がないと、実務上はかなり厳しくなります。

「完全に何も提出しない」ファクタリングは可能か

「審査なし・書類不要・即日現金化」といった宣伝を見かけることがありますが、実務の観点から見ると、次のような条件を満たすファクタリングは通常ありえません。

  • 請求書すら提出しない
  • 本人確認書類も提出しない
  • 通帳も一切提示しない

もし本当に書類ゼロで資金を渡しているとすれば、次のような可能性が高く、トラブルになりやすいと言えます。

  • 法的には「高金利の無登録ローン」に近い構造になっている
  • 実際には後で売掛金の「買い戻し」を契約で強制している(実質的な貸付)

実際に、「審査なし」をうたいながら、契約書には買い戻し義務や高額な違約金を盛り込む悪質な事例も報告されています。こうしたスキームは、ファクタリングというより出資法ギリギリの高利貸しに近く、行政からの指導対象になる可能性もあります。

現実的には、「通帳は不要だが、請求書+本人確認書類+取引メール等は必須」といった「エビデンス最小限」のサービスが、「エビデンスなし」に近い実態と考えられます。特にフィンテック系のオンラインサービスでは、次のような情報をAIで組み合わせてスコアリングし、「人手による通帳チェック」を省略しながらリスク管理を行っています。

  • Webアップロードされた請求書
  • メール・チャット履歴
  • 売掛先企業の外部信用情報

なぜファクタリングにエビデンスが必要とされるのか

ファクタリングの基本仕組み(売掛債権譲渡とノンリコース)

ファクタリングは、次のような仕組みで運用されます。

  1. 利用者が保有する売掛金(請求書)を
  2. ファクタリング会社が買い取り
  3. 売掛金の入金を待つ代わりに、即日〜数日で現金を振り込む

多くの中小向けファクタリングはノンリコース(償還請求権なし)を採用しており、売掛先が倒産したり支払わなかったとしても、原則としてファクタリング会社は利用者に返済を求められません。

このためファクタリング会社は、次のような案件を避けなければなりません。

  • 売掛金そのものが存在しない(架空請求)
  • すでに他社に譲渡されている(二重譲渡)
  • 売掛先の財務状況が悪く、支払われない可能性が高い

また、ファクタリングは貸金業法の登録を伴わない一方で、「実質的な金利」が出資法の上限(年20%)を超えないよう、監督当局からリスクに見合った適正な手数料設定と与信管理が求められています。このリスクを抑えるため、エビデンスの確認が重視されているのです。

架空請求・二重譲渡などの不正リスクとエビデンスの役割

実務上、ファクタリング会社が特に警戒している不正には次のようなものがあります。

  • 架空請求
    実際には納品やサービス提供をしていないのに、請求書だけ作って資金化する行為。
  • 二重譲渡
    同じ売掛金を複数のファクタリング会社に売却する行為。入金は1回しかないため、どこかの会社が必ず損失を被ります。
  • 金額水増し・条件改ざん
    実際の取引より高額の請求書を発行する、支払期日を偽るなどの行為。

これらを防ぐため、各エビデンスは次のような役割を担います。

  • 通帳・入金明細
    → 過去にも同じ売掛先から支払われているかを確認する
  • 契約書・発注書
    → その取引が本当に合意されているかを確認する
  • 納品書・検収書
    → 商品・サービスが実際に提供されているかを確認する
  • メール・チャット履歴
    → 取引条件や納品完了のやりとりがあるかを確認する

これらを総合的に確認し、「この売掛金なら回収できるだろう」と判断できるかどうかを審査しているのです。

オンライン完結型の場合、これらエビデンスをPDF・画像・スクリーンショットなどでアップロードし、AIが日付の整合性、取引先ドメインの信頼性、金額のブレなどを自動チェックする仕組みも普及しつつあります。

通帳・入金明細・契約書がチェックされる具体的ポイント

ファクタリング会社がよく確認するポイントは、例えば次のとおりです。

  • 通帳・入金明細

    • 売掛先と同名義の入金が定期的にあるか
    • 請求金額と直近の入金額が整合しているか
    • 他社からの借入返済や税金滞納等の状況(資金繰りの状態)
    • 同じ売掛先との取引期間・頻度(長期継続かスポットか)
  • 契約書・発注書

    • 取引金額・支払サイト(60日サイト、90日サイト等)
    • キャンセル条項や検収条件(検収後支払、返品条件など)
    • 契約形態(請負・準委任など)による成果物リスクの有無
  • 納品書・検収書

    • 納品日と請求日が妥当か
    • 数量・単価に矛盾がないか
    • 受領印や担当者名が実在する部署・人物か
  • 取引メール

    • 実際の担当者名・ドメイン(架空ドメインでないか)
    • 発注条件・納品完了の了承などの文面
    • メールヘッダーなどから、なりすましやフリーメール利用でないか

これらを組み合わせて、「請求書1枚だけでは見えない取引の裏側」を検証しているイメージです。このプロセスをしっかり行う業者ほどトラブルが少なく、利用者にとっても安心度が高いと言えます。

「エビデンスなし」はどこまで許されるか

完全エビデンスなしがほぼ不可能な理由

ファクタリング会社は売掛金の回収リスクを自社で負うため、次のような案件を買い取ることは事実上ギャンブルと変わりません。

  • 書類も取引履歴も一切ない
  • 電話で売掛先の確認もとれない

さらに、金融庁や各財務局の監督のもとで「適切なリスク管理」が求められていることもあり、真っ当な事業者ほどエビデンス確認を省略できないのが現状です。

実務上のラインとしては、次のように整理できます。

  • 完全エビデンスなしはほぼ不可能
  • 可能なのはせいぜい「通帳なし」「決算書なし」レベル
  • それでも請求書・本人確認書類・取引資料の一部は必須

特にノンリコースを標榜するサービスほど、架空請求や売掛先の倒産リスクを自社で負うため、「書類ゼロで即日現金化」といったキャッチコピーとは基本的に両立しにくいと考えるべきです。

審査が通りやすい「最小限エビデンス」のパターン

フィンテック系のオンライン完結型サービスを中心に、「最小限のエビデンスで済む」ファクタリングも増えています。典型的な必要書類は次のとおりです。

区分 主な書類
必須 ・請求書(インボイス対応であればなお望ましい)
・本人確認書類(運転免許証など)
最小限の追加エビデンス ・売掛先とのメールやチャットのやりとり
・発注書または見積書
・納品書または検収済みの証跡(チャットのスクリーンショット等)

こうしたサービスは、次のような条件を前提にしているケースが多いです。

  • 売掛先が上場企業・大企業グループなど、信用力が高い
  • 金額が10〜100万円程度の少額
  • 支払サイトが30〜60日程度と短期

そのため、通帳や決算書を省略してもリスクが取りやすい枠として設計されています。

通帳については、「原則不要」としつつ、案件内容によっては後からオンラインバンクの画面を一部だけ提示してもらうなど、柔軟な運用をしている事業者もあります。「通帳なしOK」と表示していても、案件によっては追加提出を求められることがある点は理解しておきましょう。

「請求書のみOK」をうたう業者の仕組みと注意点

「請求書だけでOK」と宣伝している業者も存在しますが、実態としては次のパターンが多いようです。

  • 実際には、

    • 請求書+本人確認書類+簡単なヒアリング
    • 電話で売掛先に直接確認

    など、見えないところでエビデンスを補っている

  • あるいは、

    • 実際には審査しているにもかかわらず、広告上「審査なし」と表現している
    • 買い戻し条項を付け、回収できなければ利用者に返済を求める

    など、実質的にはファクタリングではなくローンに近い構造になっている

中には、「請求書だけでOK」とうたいながら、実際には面談時に通帳コピーの提出を求めたり、契約直前になって「リスクが高いから」と手数料を大幅に上乗せするといった運用をしているケースもあります。広告文言だけで判断するのは危険です。

したがって、「請求書だけで本当に完結するのか」「ノンリコースかどうか」「買い戻し義務がないか」は、契約書の条文で必ず確認してください。特に次のような文言があれば、実質的にローンに近いスキームであると疑った方が安全です。

  • 「売掛先が支払わない場合は、利用者が全額弁済する」
  • 「遅延時に日歩◯%の違約金」

通帳なしでも使えるファクタリングのパターン

通帳の代わりに求められる主な書類

通帳を見せたくない場合や、ネットバンクのため紙の通帳がない場合でも、次のような書類で代替できるケースがあります。

  • 取引メール・発注書・納品書
    見積もり依頼 → 見積書送付 → 発注メール → 納品完了報告といった一連の流れがわかると、信用度が上がります。
  • 残高試算表・会計ソフトの画面
    会計ソフト(freee、マネーフォワード等)の売掛金残高一覧や売上推移グラフのスクリーンショットは、通帳の代わりに「継続的な取引実績」を示す材料になります。
  • 請求書一覧・売上台帳
    直近数か月分の請求書リストや、エクセルや会計ソフトから出力した売上台帳なども、特定の売掛先との取引回数・金額が確認できるため、評価に役立ちます。

加えて、取引先の会社案内・ホームページURL、過去の見積書や契約書のドラフトなども、「正規の取引先である」ことを示す補足資料としてプラスに働くことがあります。

オンライン完結型サービスが通帳不要にできる理由

オンライン完結型のファクタリングサービスが「通帳不要」を掲げられる理由は、主に次の3点です。

  1. AIによるスコアリング
    売掛先が大手企業・上場企業であれば、外部データベースから信用情報を取得し、通帳を確認しなくても一定のリスク評価が可能です。
    また、与信モデル上、「利用者」ではなく「売掛先の信用力」を重視してスコアリングするため、利用者側の決算書・通帳情報を軽くしても成立します。
  2. 電子データでのエビデンス確認
    メール、PDF請求書、クラウド会計との連携情報などを自動解析することで、通帳を細かくチェックしなくても取引実態を把握できるようになっています。
    API連携により、会計ソフトから売掛情報を自動取得するサービスも登場しており、「書類を印刷・スキャンして送る」という手間自体を減らす方向に進んでいます。
  3. 少額・短期に特化している
    10〜100万円程度の少額・短期ファクタリングに特化し、「ある程度のリスクは手数料でカバーする」ビジネスモデルとなっている場合があります。
    このレンジは、利用者側も「とにかく早く資金化したい・多少費用が高くてもかまわない」というニーズが強く、スピード優先で通帳チェックを省略している側面もあります。

このような仕組みにより、対面型の伝統的ファクタリングよりも必要書類を削減しつつ、不正リスクを一定レベルに抑えています。

通帳なしファクタリングのメリット・デメリット

メリット デメリット
・銀行口座の詳細を見られずに済み、プライバシーを保ちやすい
・通帳コピーの提出や記帳の手間がかからない
・口座のマイナス残高や他社借入状況を見られにくい
・オンライン申込だけで完結し、最短30分〜数時間で入金まで進めるサービスもある
・通帳がない分リスクが高いと見なされ、手数料が高くなりやすい
・利用限度額が低めに抑えられるケースが多い
・取引メールや会計データなど、別の書類を複数用意する必要がある
・売掛先が中小企業などで信用力が低い場合、通帳なしでは受付してもらえないこともある

「通帳を見られたくない」のか、「物理的に通帳がない」のかによっても対応は変わるため、事前に自社の事情を整理しておくことが重要です。ネットバンクしかない場合でも、「入出金CSV」や画面キャプチャで代替できるかどうかを確認しておくと安心です。

よくある「エビデンス不足」ケースと通過のコツ

個人事業主・フリーランスでエビデンスが薄い場合

個人事業主やフリーランスの場合、次のような理由でエビデンスが薄くなりがちです。

  • 取引基本契約書を結んでいない
  • 報酬が振込ではなく現金手渡しの場合がある
  • 会計ソフトを使っておらず、売上管理が大まか

通過率を上げるためには、次のような工夫が有効です。

  • 取引先とのメール・チャット履歴を整理しておく
  • 見積書・発注書・発注メールをなるべく保存しておく
  • 単発案件でも納品報告メールや検収完了のメッセージを残しておく

日頃から「証拠が残るコミュニケーション」を心がけることで、エビデンス不足を補いやすくなります。

加えて、次のような習慣を身につけると、ファクタリングだけでなく銀行融資にも通りやすくなります。

  • freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計を導入し、売上・入金をこまめに入力する
  • 現金払いではなく、可能な限り銀行振込で受け取る

こうした取り組みにより、「通帳+会計データ」という二重のエビデンスが蓄積されていきます。

新規取引先の売掛を資金化したい場合

新規取引先の場合、通帳に入金実績がないため、ファクタリング会社としては慎重にならざるをえません。このような場合は、次のような資料が有効です。

  • 取引基本契約書があれば必ず提出する
  • 取引先が大手企業の場合、その会社情報やホームページURLを共有する
  • 受注メール・仕様書・スケジュール表など、取引の実在性がわかる資料をセットで提示する

「単発の架空取引ではなく、今後も続きそうな正規の取引である」ことを示すことが重要です。

さらに次のような工夫も、審査側の安心感を高めます。

  • 同じ取引先との見込み案件(次回発注予定メールなど)があれば一緒に提示する
  • 必要に応じて売掛先へのヒアリングを許可する(ファクタリング会社からの確認電話)

少額・スポット利用で資料を揃えたくない場合

「5〜10万円だけ、1回きりで利用したい」「そこまで書類を用意するのは負担だ」というケースもあります。この場合は次のような方法が現実的です。

  • 最初から「少額特化」「スポット利用OK」と明記しているオンライン型サービスを選ぶ
  • 必要書類が少ないサービスの中から、「請求書+本人確認書類+取引メール程度」で済むところを比較する

こうした選び方をすると、エビデンス準備の負担を最小限に抑えやすくなります。

一方で、少額かつエビデンスが薄めの案件ほど、次のような傾向がある点にも注意が必要です。

  • 手数料が10〜20%と高めに設定されがち
  • 買取不可(審査落ち)になる確率も一定程度ある

必要資金が少額であっても、必ずしも審査が楽になるわけではない点は押さえておくべきです。

審査担当者が見ているポイントと準備方法

審査担当者が最も重視しているのは、主に次の3点です。

  • 売掛先の信用力(倒産・未払いリスク)
  • 取引の実在性(架空・水増しではないか)
  • 支払期日・サイト(いつ入金されるか)

そのため、次のような手順で資料を準備しておくとスムーズです。

  1. 売掛先がどのような企業か、ホームページや会社案内を印刷しておく
  2. 見積 → 発注 → 納品 → 請求といった取引の流れがわかる資料を時系列で揃える
  3. 過去にも同じ売掛先と取引している場合は、その請求書や入金実績をまとめておく

余裕があれば、自社の簡単な事業紹介資料(パンフレット・会社概要)や主な取引先一覧も添付すると、「反復継続して取引している事業者」であることが伝わりやすくなります。

第三者が見ても状況をスムーズに理解できる資料セットを作ることが、エビデンス不足を補う近道です。

具体的な必要書類のパターン別チェックリスト

標準的なファクタリング:請求書+通帳+決算書 ほか

一般的な対面型・中規模以上のファクタリング会社では、次のような書類が求められます。

区分 典型的な必要書類
必須 ・請求書(売掛金の対象)
・通帳コピーまたは入出金明細(直近6〜12か月分)
・決算書(2期分程度)または確定申告書
追加でよく求められるもの ・取引基本契約書・注文書
・納品書・検収書
・売掛金一覧表・試算表
・会社謄本・印鑑証明 など

このような「フルエビデンス型」は、手数料が2〜10%程度と比較的低く抑えられ、数百万円〜数千万円までの大口にも対応しやすいというメリットがあります。一方で、安定した資金調達が可能な代わりに、エビデンスのボリュームは多めになると考えておく必要があります。

エビデンス少なめのサービス:請求書+本人確認+メール等

オンライン完結型・少額特化のファクタリングでは、必要書類を絞り込んでいるサービスもあります。

  • 必須
    ・請求書
    ・本人確認書類(法人なら登記簿謄本と代表者身分証など)
  • 代替エビデンス
    ・売掛先とのメール・チャット
    ・発注書・見積書
    ・納品書・検収の証跡のスクリーンショット

決算書や通帳は不要、あるいは「案件によっては不要」としているサービスもあり、スピード重視・書類負担軽減を優先したい場合に向いています。

請求書とメールエビデンスのみで通帳を省略し、最短30分程度で審査〜入金まで完了するようなサービスも現れています。「小口・短期・オンライン完結」というニーズに特化した市場が形成されつつあります。

通帳なしを狙う場合の最低限3点セット

「通帳なし」で審査通過を狙う場合、最低限次の3点は用意しておきたいところです。

  1. 請求書
    インボイス番号、取引先情報、支払期日などが明記されているもの。
  2. 取引メール(または発注書)
    取引の合意がわかるメール、または押印済みの発注書・注文書。
  3. 納品完了の証拠
    納品書・検収書、または納品完了の報告メールやチャット履歴。

この3点がそろっていれば、通帳がなくても「取引の実在性」はかなり説明しやすくなります。

さらに余裕があれば、会計ソフトから出力した売掛金一覧表や、同じ売掛先との過去の請求書・見積書などを添えると「継続取引である」こともアピールでき、審査上の印象も良くなります。

「エビデンスなし」をうたう業者の見極め方

「審査なし」「書類不要」といった広告の裏側

「審査なし」「書類不要」「ブラックでもOK」といった派手な広告は魅力的に見えますが、次のようなリスクを含んでいる場合があります。

  • 強引な買い戻し条項
  • 遅延損害金・違約金が高額
  • 実質的な金利が出資法の上限ギリギリ

契約書の名称こそ「債権譲渡契約」となっていても、実態は貸付とほぼ同じ構造になっているケースもあります。

また、「書類不要」とうたっていても、実際には次のような方法で審査・エビデンス確認を行っていることがあります。

  • 口頭でのヒアリング内容を録音して証拠化している
  • 後から追加の書類を細かく要求してくる

「Web申込み1分・審査なし」と表示されていても、実際にはその後の電話インタビューが長時間に及んだり、売掛先への直接確認を前提としているケースもあります。広告文だけで「審査がゆるい」と判断しないことが重要です。

手数料が高くなりやすい構造と相場感

エビデンスが少ないということは、それだけリスクが高いということです。その分、手数料(ファクタリング手数料・買取率)は高くなりやすい構造になっています。

サービスのタイプ おおよその手数料水準
一般的な中小企業向けファクタリング 2〜10%程度(期間・売掛先による)
エビデンス少なめ・通帳不要・少額スポット型 10〜20%前後になるケースも珍しくない

エビデンスが薄い案件を受ける業者ほど、審査を早く・簡略化しており、ノンリコースで貸倒れリスクを負うことになります。そのため、高い手数料でリスクをカバーせざるをえない事情があります。

「エビデンスなし」は、「安く安全に資金を調達できる魔法の仕組み」ではなく、「高コストでもリスクを引き受けるニッチなサービス」であると理解しておくことが現実的です。

買い戻し条項・実質ローン化など契約書で確認すべきポイント

「エビデンスなし」をうたう業者と契約する際は、次の条項を必ず確認してください。

  • 償還請求権(買い戻し義務)の有無
    「売掛先が支払わない場合は、利用者が買い戻す」条項がないかどうか。
  • 遅延時のペナルティ
    遅延損害金の利率や違約金の有無、実質的な年利に換算して極端に高くならないかどうか。
  • 債権譲渡登記・通知の扱い
    売掛先に通知されるかどうか、2社間ファクタリングなのか3社間なのか。

これらを総合して、実質が「債権の売買」なのか「高金利の借入」なのかを見極めることが大切です。不明点があれば、契約前にメールなど記録が残る形で質問し、その回答を保存しておくと、後々のトラブル防止にも役立ちます。

失敗しないためのサービス選びの基準

自社の状況整理:必要なエビデンスのレベルを見極める

まず、自社の現状を次の観点で整理してみてください。

  • 通帳(入出金明細)をどこまで開示できるか
  • 決算書・試算表は用意できるか
  • 取引メール、発注書、納品書などはどの程度残っているか
  • 売掛先は大手か中小か、新規か既存か

この整理によって、次のような方針が見えてきます。

  • 標準的なファクタリングにも十分通用するか
  • 通帳なし・エビデンス少なめのサービスを検討すべきか

例えば、売掛先が上場企業で過去の入金実績も豊富にあり、通帳・決算書も問題なく提出できるのであれば、手数料の安い標準型を選ぶのが合理的です。一方で、創業間もない、通帳をあまり見せたくない、金額も数十万円と小さいといった場合は、オンライン完結のエビデンス少なめ型を軸に検討するのが現実的です。

通帳提出あり/なしの使い分け方

  • 通帳を出しても問題がなく、長期的に利用したい場合
    手数料が比較的安く、限度額も大きく取りやすい「標準的なファクタリング会社」をメインに検討するのが基本です。
  • 今回は事情があり通帳を見せたくない、少額スポットで利用したい場合
    オンライン完結型や通帳不要をうたうサービスも比較対象に入れつつ、手数料や契約条件を十分に確認することが重要です。

このように、ケースバイケースで「通帳あり/なし」を使い分けるのが現実的です。最初は通帳ありで利用して信用を積み、2回目以降は書類を簡略化してくれる業者も存在しますので、「長く付き合えるかどうか」という観点も含めて事業者を選ぶとよいでしょう。

比較時に見るべき項目(手数料・入金スピード・契約形態)

ファクタリング会社を比較する際は、次のポイントを確認することをおすすめします。

  • 手数料(買取率・割引率)
  • 入金スピード(最短即日/翌営業日など)
  • 契約形態(2社間/3社間、ノンリコースかどうか)
  • 必要書類の種類とボリューム
  • 売掛先への通知有無(取引先に知られたくないかどうか)
  • 最低利用額・上限額

「エビデンスが少ないほど手数料が上がりやすい」「審査が甘いほど契約条件は厳しくなりがち」という前提で、総合的なバランスを見て選ぶことが大切です。口コミや比較サイトだけでなく、実際に複数社へ問い合わせて見積を取ることで、自社の条件だとどの程度の手数料・必要書類になるのか、現実的なラインが見えてきます。

ケーススタディ:エビデンスが少なくても資金調達できた事例

個人事業主が「請求書+取引メール」で通帳なし審査を通過

業種 Webデザイナー(個人事業主)
必要資金 30万円
売掛先 上場企業の子会社(新規案件)

提出した書類

  • 請求書(30日サイト)
  • 取引先担当者とのメール(発注〜納品完了まで)
  • 納品データの受領報告メールのスクリーンショット
  • 本人確認書類(運転免許証)

このケースでは、通帳にまだ入金実績はありませんでしたが、売掛先が信用力の高い企業であり、メールのやりとりも明確だったことから、通帳なしで審査が通り、当日中に資金化できました。

オンライン型サービスでも、フリーランス・個人事業主 × 上場企業グループへの請求 × 請求書+メールエビデンスという条件を満たす案件は、「エビデンス最小限」で通過しやすい典型的なパターンです。

創業直後で決算書がない企業が利用できたパターン

業種 IT受託開発(法人設立半年)
必要資金 100万円
売掛先 中堅メーカー(既に2件納品済み)

提出した書類

  • 3件分の請求書
  • 売掛先との取引基本契約書
  • 過去2回分の入金実績がわかる通帳コピー
  • 現時点の試算表(会計ソフト出力)

決算書は存在しませんでしたが、継続した取引実績、試算表による売上推移、契約書による長期的な取引見込みが評価され、標準的な手数料でファクタリングを利用できました。「決算書がない=利用不可」ではなく、他のエビデンスでどこまで補えるかがポイントになります。

エビデンス不足で一度落ちたが、改善後に通過した事例

当初の状況

個人でイベント運営を行っていたが、チケット販売の売上を請求書化してファクタリング申請。取引先との契約書はなく、現金決済が多かったため、通帳には入金履歴がほとんどない状態だった。

→ エビデンス不足と判断され、審査落ち。

改善後の対応

  • イベント会社として法人化し、チケット販売プラットフォームと正式な契約を締結
  • 売上が銀行振込で入るように整理
  • 会計ソフトで売上・売掛金を管理し、試算表を作成

その後、プラットフォームとの契約書、通帳の入金履歴、試算表を揃えて再申請したところ、問題なく審査が通りました。

この事例から、「エビデンス不足」は時間をかけて改善できる問題であり、一度審査に落ちても完全に道が閉ざされるわけではないことがわかります。特に、支払方法を現金から振込へ変える、会計ソフトで帳簿を付け始めるといった小さな改善でも、半年〜1年継続すれば「立派なエビデンス」として評価されるようになります。

「ファクタリング エビデンスなし」を検討する人へのチェックポイント

まず確認すべき自社の情報・資料リスト

検討前に、次の資料が手元にあるかどうか確認してみてください。

  • 対象となる請求書(インボイス)
  • 売掛先との取引基本契約書・発注書・見積書
  • 納品書・検収書・納品完了のメール
  • 通帳または入出金明細(ネットバンク画面でも可)
  • 決算書・試算表・売掛金一覧表

この中から「今出せるもの」と「今は出したくないもの」を仕分けることで、どのレベルのエビデンスに対応したサービスを選ぶべきかが見えてきます。

もし資料がほとんど揃っていない場合は、少額・エビデンス少なめのサービスに相談しつつ、並行して今後に向けたエビデンス蓄積の体制づくりを進めていくことが重要です。

「今すぐ資金が必要」なときの現実的な選択肢

時間的な余裕がない場合でも、最低限のエビデンス準備は避けられません。現実的なステップは次のとおりです。

  1. まずは請求書+本人確認書類+取引メールをすぐに揃える
  2. オンライン完結型の「必要書類少なめ」サービスに事前相談する
  3. 併行して、銀行融資・ビジネスローン・カードローンなど他の資金調達手段も検討する

コロナ禍以降は、公的融資・制度融資、売掛金保証やABL(動産・売掛債権担保融資)など、ファクタリング以外の選択肢も増えています。

「エビデンスなし」は魅力的に見えますが、本当に何も出さなくてよいサービスは、裏側のリスクが極めて高いと考えるべきです。短期的な資金繰りを乗り切れても、高手数料で利益が圧迫されたり、実質ローン化した契約で返済負担が重くなったりするなど、中長期的なダメージにならないか冷静に比較検討することが重要です。

エビデンスを日頃から貯めておくための簡単な工夫

将来の資金調達の選択肢を広げるために、日頃からできる工夫として次のようなものがあります。

  • 取引先とのやりとりは、できるだけメールやチャットなど記録が残る形で行う
  • 見積書・発注書・納品書は、PDFや画像で必ず保存しておく
  • 会計ソフトを活用し、売掛金や売上を日々入力しておく
  • 可能な限り銀行振込で取引を行い、通帳に履歴を残す

こうした地道な積み重ねが、将来「ファクタリング エビデンスなし」で検索したときに、より条件の良いファクタリングを選べるかどうかを左右します。

特に2023年以降はインボイス制度の導入により、請求書番号や取引情報の信頼性が高まり、インボイス対応の請求書自体が「強力なエビデンス」として機能するようになってきました。

エビデンスは「今」の審査のためだけでなく、「これからの資金調達力」を支える資産です。意識的に蓄積していくことをおすすめします。

まとめ:「エビデンスなし」の甘い言葉に振り回されないために

「エビデンスなし」のファクタリングは、現場の実態としてほとんど存在しないに等しく、たとえ通帳や決算書を省いても、請求書や取引メール、本人確認書類など何らかの証拠の組み合わせは避けられません。

もし本当に書類ゼロで資金を出すとすれば、法的には高利の貸付に近づき、買い戻し義務や過大な違約金など、利用者にとって過酷な条件が潜んでいる可能性が高まります。

一方で、オンライン完結型を中心に、請求書+メール+本人確認といった「最小限のエビデンス」で利用しやすいサービスも広がりつつあります。大切なのは、自社がどこまで資料を用意できるかを冷静に整理し、その条件に見合う事業者を選ぶことです。

そして、日頃から取引メールや請求書、会計データをきちんと残しておくことで、「エビデンスなし」という甘い宣伝に頼らなくても済む選択肢を増やしていく視点が欠かせません。

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