「個人向け ファクタリング」は、フリーランスや個人事業主にとって、入金待ちの請求書をすぐ現金に変えられる有力な資金調達手段として注目を集めています。銀行融資よりもハードルが低く、スマホだけで申し込みが完結するサービスも登場しました。一方で、手数料や違法業者など、押さえておきたい落とし穴もあります。本記事では、仕組みやメリット・デメリット、利用すべき場面まで整理して解説します。
個人向けファクタリングとは
個人向けファクタリングの基本概念
個人向けファクタリングとは、個人事業主やフリーランスが保有する請求書(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた現金を受け取るサービスです。融資ではなく債権の売買にあたるため、借入には該当しません。
近年はスマートフォンやパソコンだけで完結するオンライン型が主流となっており、請求書や通帳の画像をアップロードするだけで申し込めるサービスも多く、最短即日で資金化できる場合があります。民法改正により売掛債権の譲渡がしやすくなったことや、フリーランス人口の増加を背景に、個人による利用が急増しています。
融資との違い|借金ではなく売掛金の売却
ファクタリングは借金ではないため、原則として信用情報に直接影響しない点が特徴です。審査では利用者本人ではなく、売掛先(取引先)の支払い能力が重視されます。ただし、売却に際して手数料は発生します。
融資のように元本や利息を分割返済していくのではなく、「将来入るはずだった売掛金が、手数料を差し引いた金額として前倒しで入ってくる」というイメージです。そのため、赤字決算や税金滞納があっても、売掛先が優良であれば利用できるケースが多い一方で、売掛先の信用力が低い場合は、利用者本人に問題がなくても審査に通らないことがあります。
会社員の給料は対象外|利用できる人・できない人
給与債権(会社員の給料)は、原則として個人向けファクタリングの対象外です。対象となるのは、事業に基づく請求書を保有している個人事業主・フリーランスなどに限られます。
過去には「給与ファクタリング」と称して会社員の給料を対象にしたサービスが存在しましたが、実質的に高金利の違法な貸付と判断され、行政処分の対象となっています。あくまで、取引先(主に法人)に対して発行した業務委託料・請負代金などの請求書のみが対象であり、アルバイト代や会社員の給与明細を使った取引は利用しないよう注意が必要です。
個人向けファクタリングのメリット・デメリット
個人事業主・フリーランスにとっての主なメリット
個人向けファクタリングの主なメリットは、以下の通りです。
- 即日現金化できる場合があり、急な資金繰りに対応しやすい
- 開業直後や赤字決算でも、売掛先の信用があれば利用しやすい
- 借入ではないため、銀行融資枠を圧迫せず、個人の信用情報にも原則登録されない
- 少額・単発利用がしやすく、「この請求書1枚だけ」といったスポット利用に対応しやすい
- 取引先に知られずに利用できる2社間方式を選べば、資金繰りの状況を対外的に知られにくい
利用前に知っておきたいデメリットと注意点
メリットが多い一方で、デメリットや注意点も存在します。
- 手数料が比較的高く、案件によっては数%〜20%程度になることがある
- 頻繁に利用すると、手数料負担により資金繰りが悪化するリスクがある
- 売掛先の信用度が低い、取引実績が浅い、支払い遅延歴がある場合、希望額どおりに調達できなかったり、そもそも審査に通らないことがある
- 取引先との契約に債権譲渡禁止条項が盛り込まれている場合、ファクタリング契約自体が無効となるリスクがある
- 法外な手数料を請求したり、同じ請求書を複数社に売却させる二重譲渡などのトラブルを起こす悪質業者も存在し、業者選びを誤ると大きな損失につながる
銀行融資・カードローンとの使い分け
短期のつなぎ資金や、銀行融資の審査に通りにくい場合はファクタリング、長期かつ低コストの資金が必要な場合は銀行融資という使い分けが基本です。
具体的には、「入金予定は確実にあるが、入金までの数週間〜数ヶ月を乗り切りたい」「開業して間もなく決算書がないため銀行に断られた」といった場面は、ファクタリングが適しています。一方で、店舗改装や設備投資、人員増強など、回収まで時間がかかる投資には、金利が低く返済期間も長く設定できる銀行融資や公的融資を優先したほうが、総コストを抑えやすくなります。
個人向けファクタリングの仕組みと利用の流れ
申し込みから入金までの全体像
一般的な流れは、請求書の提出 → 審査(売掛先を重視) → 契約・債権譲渡 → 手数料差引後の入金、というステップです。サービスによっては最短即日で入金される場合もあります。
オンライン完結型サービスでは、WebフォームやLINEから申し込み、請求書PDFや通帳画像をアップロードすると、AIや担当者が売掛先の信用力や取引実績を確認し、数十分〜数時間で買取可否と手数料率が提示されます。内容に同意すると電子契約を締結し、指定口座に振込が行われます。初回はやや時間がかかることもありますが、2回目以降は同じ売掛先・同じ業者であればスムーズに進むケースが多く見られます。
必要書類と審査のポイント
基本的に必要となる書類は、請求書、通帳明細、本人確認書類の3点です。審査では、売掛先との取引実績や支払い能力が重要なポイントとなります。
多くの業者で求められる書類は、次のとおりです。
- 請求書(支払期日・金額・取引先名が明記されているもの)
- 直近数ヶ月分の通帳明細(取引先からの入金実績が分かるもの)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
開業届の控えや簡易な確定申告書を求められる場合もありますが、一般に決算書や保証人は不要です。審査では主に、「同じ取引先から継続的に入金があるか」「請求金額や支払サイトが妥当か」「架空請求ではないか」といった点が重点的にチェックされます。
2社間・3社間ファクタリングの違い
2社間ファクタリングは、取引先に債権譲渡を通知せずに利用でき、秘密保持に優れていますが、手数料が高めになる傾向があります。3社間ファクタリングは、取引先が支払先をファクタリング会社へ変更するため回収リスクが小さく、手数料は抑えやすい一方で、売掛先への通知と承諾が必須となります。
個人向けでは、取引先に知られたくないというニーズが強いため、利用者とファクタリング会社だけで完結する2社間方式が主流です。この場合、売掛先からの入金はいったん利用者の口座に入り、その後ファクタリング会社へ送金します。3社間では、売掛先が直接ファクタリング会社に支払う仕組みのため、手数料は低くなりやすいものの、「支払先変更の承諾」が必要となることから、個人事業主が利用できる業者は限られます。
調達可能金額の目安と手数料水準
対応可能な金額は10万円台から数百万円程度までが一般的で、手数料は案件や業者によって大きく異なるため、事前の確認が重要です。
個人向け専門サービスでは、初回は10〜25万円程度の少額からスタートし、その後の取引実績や回収状況に応じて上限額が段階的に引き上げられるケースが多く見られます。売掛先が大企業で支払期日が近いほどリスクが低いため手数料は下がりやすく、スタートアップ企業や海外企業向けの請求書など、リスクの高い案件では手数料も高くなる傾向があります。
また、振込手数料や事務手数料が別途発生することもあるため、「最終的にいくら受け取れるのか」を見積もり段階で確認しておくことが重要です。
個人向けファクタリングを使うべきケース・避けるべきケース
相性が良いケース(向いている人・状況)
個人向けファクタリングは、次のような状況と相性が良い手段です。
- 納品後すぐに資金が必要で、入金サイトが長い場合
- 開業直後で決算書がなく、銀行融資の利用が難しい場合
- 取引先が大手企業など信用力の高い相手である場合
- 広告・制作・ITなど、継続的に請求書が発生する一方で支払サイトが長く、資金ギャップが生じやすい業種
- 建設業や下請けなどで、元請けは大手だが支払いまで時間がかかるケース
- コロナ禍や一時的な売上減少で資金ショートが懸念される一方、今後の受注は見込めている場合
こうした場面では、銀行融資の審査や実行を待っている時間的余裕がないことも多く、ファクタリングが「事業を止めないためのブリッジ」として機能しやすい状況といえます。
利用を避けたほうがよいケース(向いていない人・状況)
一方で、次のような場合は、ファクタリングの利用を慎重に検討したほうがよいでしょう。
- 頻繁に短期資金を繰り返し調達する必要があり、手数料負担が重くなりそうな場合
- 取引基本契約書などに債権譲渡禁止条項があり、契約上ファクタリングが認められていない場合
- 売掛先の支払い遅延や未払いが常態化しており、そもそも回収リスクが高い場合
- 事業の先行きが不透明で、短期資金を入れても抜本的な改善策がない場合
このようなケースでは、ファクタリングを使って一時的に資金をつないでも、根本的な資金繰り改善にはつながりにくく、「手数料だけが膨らんでいく」結果になりかねません。必要に応じて、専門家(税理士・公的支援窓口など)への相談も検討しましょう。
まとめ|個人向けファクタリングを賢く活用するために
個人向けファクタリングは、入金待ちの請求書を早期に現金化したいフリーランス・個人事業主にとって、有力な資金調達手段のひとつです。借入とは異なり、あくまで「売掛金の売却」であることから、信用情報への影響を抑えつつ、開業直後や赤字決算の段階でも利用しやすい特徴があります。一方で、手数料負担が重くなりやすいことや、債権譲渡禁止条項・違法業者といった注意点を見落とすと、かえって資金繰りが悪化しかねません。
銀行融資やカードローンと比較しながら、「短期のつなぎ資金なのか」「長期の投資資金なのか」「取引先の信用力は十分か」といった観点で使い分けることが欠かせません。そのうえで、手数料の内訳や最終的な入金額、2社間・3社間の違い、必要書類や審査ポイントを事前にしっかり確認し、自身の事業にとって無理のない範囲で活用していくことが重要です。

