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判例で見る怪しいファクタリング事例の特徴

目次

「怪しいファクタリング」というイメージの背景

「ファクタリングは怪しい」という声の背景には、裁判所が闇金と認定した判例の存在があります。とくに「売掛債権の売買」を装い、実態は高金利の貸付だったケースが相次ぎました。本記事では、代表的な判例をもとに、怪しいファクタリングの典型パターンと合法な取引との違いを解説します。

判例でわかる「怪しいファクタリング」とは?

この記事でわかること

  • 「ファクタリングを装った闇金」を裁判所がどのように判断しているか
  • 違法とされた事例に共通する典型的なパターン
  • 合法なファクタリングとの決定的な違い

ファクタリング本来の仕組み

売掛債権譲渡としてのファクタリングの基本

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社(ファクター)に譲渡し、手数料を差し引いた代金を即時に受け取ることで資金化する取引です。売掛先からの回収はファクターが行い、取引の法律構造は民法上の債権譲渡に基づきます。そのため、本来は貸金業には該当しません。

ここで重要になるのが、取引の実態が「売掛債権の売買」なのか「お金の貸し借り」なのかという点です。合法なファクタリングには、次のような特徴があります。

  • 契約の名目だけでなく、実態としても「売買」になっている
  • 譲渡される債権が、請求書や納品書など実在する取引に基づく
  • ファクターが、売掛先の信用状況や債権の真正性を審査し、そのリスクに応じておおむね5〜20%程度の手数料を設定する

民法第466条は「債権は譲渡することができる」と定めており、この一般原則の上に成り立っているのが、本来のファクタリングです。

リコース型・ノンリコース型の違いと論点

ファクタリングには、主に次の2種類があります。

  • リコース型:売掛債権が回収不能となった場合、利用者が債権を買い戻す義務を負う
  • ノンリコース型:ファクターが回収不能リスクを負担し、その分手数料が高くなる

判例や実務で問題になるのは、リコース型において、どこまで条件を強くすると「事実上の返済義務」=融資と同視されてしまうかという点です。

健全なリコース型では、例えば次のような設計がなされています。

  • 買戻し義務は「売掛先の倒産など特定の事情が生じた場合」に限定されている
  • 元本と高額な違約金を一括で支払わせるような条項は設けない

一方で、違法と判断された事例では、リコース型を名目としながら、実際には次のような条項が組み込まれています。

  • 実質的に「必ず全額返済させる」内容(遅延時の一括弁済条項など)
  • 返済スケジュールを細かく区切った分割払いで、元利均等返済に酷似した支払方法

このような場合、取引の実態は「売掛債権を売っている」のではなく、「お金を借りて返している」構造になっており、裁判所で違法な貸金と判断されやすくなります。

なぜ「貸金業登録なし」で運営できるのか

債権の売買そのものは、貸金業法上の登録が不要なため参入障壁が低く、これを悪用して「ファクタリング」を名目とした高利貸しが横行しやすい構造になっています。

健全なファクタリング会社は、あくまで「債権の売買業」として運営しているため、貸金業登録は不要です。しかし、この規制のすき間に、過去に闇金を営んでいた業者などが流入してきました。特に次のような背景が指摘されています。

  • 手形割引や消費者金融への規制が強化されたあと、代替スキームとして狙われたこと
  • 事業者や個人事業主に対して「審査がゆるい資金調達」として売り込みやすかったこと

その結果、「貸金業の規制を逃れる目的でファクタリングを名乗る」例が、2010年代後半以降に急増しました。判例で違法と認定された業者は、いずれも実態が融資であるにもかかわらず貸金業登録をしていないという共通点があります。

裁判例から見る「怪しいファクタリング」の代表的パターン

2017年の有名判例:320万円の債権譲渡が20万円の貸付と判断されたケース

事案の概要

この事案では、書面上は「320万円の売掛債権を譲渡した」とする契約が作成されていました。しかし、実際に利用者が受け取った資金は20万円のみでした。

利用者は、その後、業者に対して分割で送金を続け、全額の送金が完了すると、形式上は売掛債権が利用者に戻されるというスキームでした。

裁判所が「債権譲渡ではなく実質は融資」と判断したポイント

裁判所は、名目ではなく実態に着目して、「実質は貸付である」と判断しました。特に次のような点が重視されています。

  • 債権額320万円という名目と、実際の資金供与額20万円との大きな乖離
  • 「譲渡代金」が一括で即時に支払われておらず、返済スケジュールに沿って小分けに支払われる構造になっていたこと
  • 利用者が業者に支払う総額が20万円を大きく上回り、その差額が実質的な利息として非常に高額になっていたこと

これらの事情から、「売掛債権の売買」としては不自然であり、実際には20万円を貸し付け、その返済と利息を分割で回収していたと評価されました。

有罪認定に至った決め手

決定的とされたのは、支払フローと契約条項が、典型的なローン契約と同じ構造を持っていた点です。具体的には、次のような要素が指摘されています。

  • 期日ごとに「○月分の支払い」「残高」などを管理し、ローン契約と同様の形で債務管理が行われていたこと
  • 返済が遅れた場合に、高額な遅延損害金や一括弁済条項が設けられていたこと
  • 売掛債権の回収リスクを実質的には業者が負っておらず、利用者が支払い続ける限り、債権の内容・回収状況に関係なく業者が利益を得られる仕組みだったこと

これらは「売買」では説明できない、融資特有の要素です。このため裁判所は、出資法違反および無登録貸金業として有罪と認定し、「ファクタリングを装った闇金」の典型例としてしばしば引用される判例となっています。

給与ファクタリングの違法判例に見る「偽装」の実態

給与債権を対象にしたスキームの特徴

給与ファクタリングは、個人の将来の給与債権を買い取ると称して即金を渡すもので、実態としては高利の給与前借りに近い設計となっているものが多く見られます。典型的なパターンとして、次のような流れが挙げられます。

  • 将来受け取る給与の一部を「給与債権」として譲渡したことにし、即日で数万円を振り込む
  • 翌月以降の給与日に合わせて、利用者の口座から分割で引き落とす
  • 手数料は30〜50%以上に達し、実質年利に換算すると数百%になる

出資法・貸金業法違反とされた理由

給与は生活の糧となる性質が強く、判例上も保護の必要性が高いとされています。裁判所は給与ファクタリングについて、概ね次のような理由から違法な貸付と判断しています。

  • 給与債権の譲渡を名目としているが、実態は給与の前借りであり、「個人への貸付」に当たる
  • 非常に高い手数料部分が、事実上の利息として機能しており、出資法の上限金利(年109.5%など)を大幅に超えている
  • 取り立ての際に勤務先へ連絡する、SNS上で名前や勤務先を晒すなど、強い心理的圧力を用いた違法な取り立て行為が行われていた

これらの事情を踏まえ、裁判所は「貸金業法上の登録のない違法な貸金業」「出資法違反の高金利」として、契約を無効とし、支払済み金員の返還義務を認める判断を下しています。

判決文で繰り返し指摘される論点

給与ファクタリングに関する判決では、主に次の3点が繰り返し問題とされています。

論点 チェックされる内容
1. 譲渡代金が真正に支払われているか 給与額や債権価値に応じた対価か、それとも「数万円だけ先払い」といった不自然な設定か
2. 回収リスクを誰が負担しているか 給与が減額・未払いになっても、個人に全額支払いを求め続けていないか
3. 取り立ての態様が適法か 勤務先・家族への連絡示唆や、深夜の執拗な電話など、闇金類似の取立てかどうか

これらの要素がそろう場合、名称が「給与ファクタリング」であっても、裁判所は一貫して闇金とみなし、違法と判断する傾向にあります。

「債権譲渡代金の未払い」が問題となった事例

契約書上は債権譲渡なのに代金が支払われない構造

本来のファクタリングは、「債権を売却し、その代金を即座に一括で受け取る」というシンプルな取引です。しかし、違法と判断された事例の中には、契約書上は債権譲渡としながら、実際には譲渡代金がきちんと支払われておらず、次のような不自然な構造をとるものが見られます。

  • 「譲渡代金」と称している金額が、実際には分割で小出しに支払われる
  • 売掛先からの入金状況に関係なく、利用者が毎月一定額を支払うことになっている
  • 売掛債権が回収不能になっても、業者が損失を負担せず、利用者に支払いを継続させる

こうしたケースでは、形式的には「債権を売っている」ように見えても、実態としては利用者に対して資金を貸し付け、その返済を分割で受け取っている構造であると判断されやすくなります。

裁判所が問題視したポイント

この種の事例で裁判所が特に重視するのは、次のような点です。

  • 譲渡代金が一括払いではなく「返済スケジュール」のような形になっていないか
  • 「残高」「支払回数」など、ローン契約と同様の管理が行われていないか
  • 名目上の債権額と実際に動く金額との乖離が著しく、対価として不相当に低くなっていないか
  • 売掛債権の内容・回収状況に関係なく、利用者に画一的な支払い義務を課していないか

これらが認められると、「実態は高利の金銭消費貸借契約(ローン)であり、債権譲渡は名目に過ぎない」と評価され、出資法・貸金業法違反が認定されるリスクが高まります。

判例からわかる「怪しいファクタリング」を見分ける視点

名目ではなく「資金の流れ」と「リスクの負担」で判断される

この記事で取り上げた判例からは、「契約書のタイトルがファクタリングかどうか」ではなく、実際の資金の流れとリスクの負担関係こそが判断の軸になっていることがわかります。

名目上は「売掛債権の譲渡」「給与債権の売買」とされていても、

  • 受け取る金額と名目上の債権額が極端にかけ離れている
  • 支払い方法が分割返済のローンそのものになっている
  • 債権の回収状況にかかわらず利用者に全額支払いを求め続ける
  • 高額な手数料が実質的な利息として機能している

といった事情が重なると、「実態は高利の貸付」と評価されやすくなります。

健全なファクタリングとの決定的な違い

逆にいえば、健全なファクタリングは、

  • 実在する取引に基づく売掛債権・給与債権を対象としている
  • 債権の価値や回収リスクに応じた手数料水準が設定されている
  • 譲渡代金が原則として一括で支払われる
  • 売掛先の倒産など、限定的な場合を除き「必ず全額返済させる」ような条項を設けていない

といった点を備えています。

ファクタリングの利用を検討する際は、「貸金業登録の有無」だけでなく、契約内容・支払スケジュール・債権リスクの負担者を具体的に確認し、判例で問題となった典型パターンに当てはまらないかをチェックすることが重要です。

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